サステナビリティ

Sustainability

TCFD提言に沿った情報開示

TCFD提言への賛同

当社は、グループ経営理念体系の「5つの指針」のひとつに 「地球環境を守るためのたゆまぬ努力」を掲げています。また 「高島屋グループ環境方針」においても、地球温暖化の防止や CO2排出量の削減に重点を置くなど、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

このグループ環境方針は、ESG経営で掲げる環境課題を 解決につなげる基本的姿勢でもあります。お客様やお取引先、地域社会など、多くの人々との直接的な接点をもつという事業特性を生かしながら、環境方針に基づくさまざまな活動に取り組んでいます。

しかし一方で、近年は気候変動や資源の枯渇、生物多様性の減少といった環境問題がより深刻化しており、環境問題への取り組みの重要性や緊急性が高まっています。特に中核事業である百貨店事業では、化石燃料などの地下資源による電力の大量消費や、プラスチックや食品ごみの大量廃棄、衣料品の過剰在庫など、現行のビジネスモデルが環境負荷を前提としていることをリスクと捉えています。

そこで当社は、従来型のビジネスモデルから、地球資源を再生・修復するビジネスモデルへと変革し、環境課題解決と事業成長の両立に取り組みます。また、TCFD提言に賛同し、TCFD提言が推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理とリスクに対する取り組み」「指標と目標」の4つの開示項目に基づき情報開示のさらなる拡充を図ってまいります。

TCFD

TCFD提言が推奨する開示項目に沿った情報開示

TCFD提言が推奨する4つの開示項目「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」と、項目毎の具体的な開示内容に基づき、当社グループは、気候関連情報を開示しています。

【1】ガバナンス(環境課題に関するガバナンス)

(1) 取締役会が気候関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象

高島屋グループでは、グループESG経営で掲げる環境課題への取り組みを通じ、企業価値の向上や持続的成長を図り、お客様や株主・投資家をはじめとしたステークホルダーの皆様からのご期待に応えるためには、コーポレート・ガバナンスの強化は経営上の重要な課題と認識しています。

グループESG経営を組織内に浸透させ、当社がお客様や株主などステークホルダーの皆様との信頼関係を深め、社会的責任を重視した経営を持続的に推進するうえで、その支えとなるのが内部統制システムであると考えています。内部統制システムに関わる主な会議としては、社長を委員長とする「高島屋グループCSR委員会」および「高島屋グループリスクマネジメント委員会」を設置しています。

「グループCSR委員会」は、本年度より半期に一度開催し、コンプライアンス経営の徹底に加えて内部統制の状況や、新しい社会課題に対するCSR領域への取組み状況をグループ横断的に検証し、強化する体制を整えています。

「グループリスクマネジメント委員会」は、必要に応じ都度開催し、主管部門が各部門と連携し、案件ごとにラインを通じて内部統制の強化を図っています。コンプライアンスリスク・自然災害 リスク等の予防、極小化に向けグループ横断的に統制を図っています。また、新たなビジネスへのチャレンジ等、事業戦略上発生するリスクに対しては、リターンとのバランスを考慮しながら的確にコントロールし、グループ全体のリスクマネジメント体制の確立に取り組んでいます。

さらに、ESG経営を組織内に浸透させ、設定した重点課題に対する取組みを確実に推進していくため、グループ視点での方針管理、進捗管理を充実させる「グループ環境・社会貢献部会」を四半期毎に開催し、より一体的でかつ実効性が発揮できる体制を整えています。

(2) 経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス(委員会等)、モニタリング方法

取締役会は、当社の業務執行がグループ全体として適正かつ健全に行われるために、取締役の職務執行状況を適切に監督するとともに、実効性あるグループ全体の内部統制システムの基本方針に基づく運用状況や課題について定期的に確認しています。

社長が委員長を務める「グループCSR委員会」は、ESG重点課題の進捗状況を報告し、改善点に対しては速やかに次年度の活動へ反映するなどPDCAサイクルを徹底し、毎年度モニタリングを行っています。その内容については取締役会に報告し、取締役会による監督体制のもと、環境課題の取組みに対するガバナンスの強化に努めています。

また、社長が委員長を務める「グループリスクマネジメント委員会」は、当社の業務執行に伴うさまざまなリスクを抽出し、リスク発生時の損失極小化に向けた対応等、協議された内容については、取締役会へ報告を行っています。

【内部統制システム体制図】

内部統制システム体制図

【ESG重点課題 推進体制図】

ESG重点課題 推進体制図

【2】戦略(気候関連シナリオ分析)

(1) 短期・中期・長期のリスク・機会の詳細

当社は、将来の気候変動が事業活動に与えるリスクと機会、財務影響を把握するため、従業員選抜型ワークショップを開催し、TCFDが提唱するフレームワークに則り、シナリオ分析の手法を用いて、2050年時点における外部環境変化を予測し、分析を実施しました。気候変動に伴う自然環境の変化や資源の枯渇等は、長期間にわたり当社の事業活動に大きな影響を与えるため、百貨店のみならずグループ事業全体において、従来型のビジネスから、地球資源を再生・修復するビジネスへと変革していくことが必要であると認識しています。当社が目指す将来社会を見据え、環境・社会領域におけるESG重点課題10項目は、2030年時点の達成目標(中長期)や、年度毎の数値目標(ロードマップ)を設定し、PDCAサイクルにて進捗管理を行っています。

(2) リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度

TCFDが推奨する気候変動関連リスクを移行リスク・物理的リスクの2つのカテゴリーに分類し、当社の事業活動に甚大な影響を及ぼす可能性がある主要なリスク項目を特定しました。また、「2℃以下シナリオを含む、様々な気候変動関連シナリオに基づく検討」を行うため、当社は、IPCCやIEA等のシナリオを参考に、事業活動や財務に及ぼす影響を分析し、持続可能な成長に向け、その対応策を検討・推進しています。当社のシナリオ分析は、パリ協定の目標である「2℃未満」と、CO2排出量削減が不十分な「4℃」の2つのシナリオを想定し、TCFDが推奨する典型的な気候関連リスクと機会を参考に分析を行いました。

【想定シナリオ】
2℃未満シナリオ
  • ● 気候変動対応の厳しい法規制施行による事業運営コストの増加
  • ● エネルギーコストや商品価格の高騰に伴う、商品調達リスクの拡大
  • ● 消費者の環境意識の高まりによる新たなマーケット獲得
4℃シナリオ
  • ● 自然災害の多発・激甚化に伴う店舗被災、サプライチェーンの断絶など、営業機会の損失
  • ● エネルギー価格の高騰や資源不足に伴う商品調達リスクの拡大
  • ● 環境負荷を前提としたビジネスモデルから脱却できない企業に対する市場からの淘汰
【高島屋グループのリスク・機会の概要と事業および財務への影響】
リスク・機会の分類 高島屋グループ 気候変動関連リスク・機会の概要 事業および
財務への影響
+2℃未満 +4℃
リスク 移行リスク 市場と技術
  • *再生可能エネルギーへの転換に伴う調達コスト増加
  • *環境マーケット需要の獲得遅れに伴う競争力低下
評判
  • *環境課題への対応遅れに伴うステークホルダーからの信用失墜、ブランド価値の毀損、組織会員離反
政策と法
  • *炭素税の導入、プラスチック循環促進法への対応など、規制強化に伴う事業運営コストの増加
物理的リスク
  • *大規模自然災害の発生に伴う店舗閉鎖や、サプライチェーン断絶に伴う営業機会損失
機会 エネルギー源
  • *省エネ推進に伴う電力使用コスト削減
  • *災害に備えた事業活動のレジリエンス確保
市場
  • *ESG経営の推進によるステークホルダーからの共感獲得、企業価値向上
  • *高まる環境意識に対応した商品・サービスの提供によるマーケット獲得
+4℃の矢印は+2℃未満シナリオと比較した際の当社財務影響の大きさを示しています。
(3) シナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス

2030年時点を想定した2つのシナリオにおける事業および財務への影響に関し、規制強化に伴う炭素税の導入や、再生可能エネルギー由来の電力調達コストが財務に影響を及ぼすものと考え、2℃未満シナリオにおける財務影響を試算しています。

【当社への財務影響】
2030年時点を想定した財務影響
炭素税導入 約△25億円 IEA(※1)の2℃未満シナリオにおける2030年の先進国炭素税価格(約11千円/t-CO2)を基準に、当社2019年時点のCO2排出量(約230,516t)より算出
再エネ由来の
電力調達
約△16億円 現状の調達電気との料金格差(約4円/kwh)に、当社2019年時点の電力使用量(約392,824mwh)より算出
※1 IEA(国際エネルギー機関)発行「世界エネルギー展望World Energy Outlook2019」参照

当社は、気候変動関連リスクに対する事業活動や財務に与える影響などを踏まえ、持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、社会課題解決と事業成長の両立を図る「グループESG経営」を推進しています。 その一環として、2019年、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力で調達することを目指す国際的イニシアチブ「RE100」に参加し、「2050年までに事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギーに転換すること」を目標とし、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しています。また、店舗設備を省エネ効率の高い機器へと順次更新するとともに、既存照明をLED照明へ変更することにより、使用電力量の削減によるCO2排出量削減に努めています。国内百貨店では2011年~2019年までで、15万4千台のLED照明を導入し、約△10,000t のCO2排出量削減を図りました。

さらに当社は、グループ総合戦略「まちづくり」(以下、まちづくり戦略」を通じ、「街のアンカーとして役割発揮」「館の魅力最大化」に取り組み、環境に配慮した商品やサービス、店舗施設の提供など、新しい価値を提案する次世代商業施設づくりを推進し、新たなマーケット獲得に取り組んでいます。グループ経営においても、これまで百貨店に集中していた経営資源をグループ内で有効活用し、既存事業の収益強化と将来の成長に向け事業規模の拡大や新規事業の開発を進めるなど、気候変動関連リスクの抑制に努めるとともに、マーケット変化に積極的に対応し、新たなビジネス機会獲得に取り組んで参ります。

【3】リスク管理とリスクに対する取り組み

(1) 気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法

当社は、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある気候関連リスクとして、「気候変動」や「自然災害(地震・台風・洪水等)」、「ESG経営への取り組みの遅れ」、「サプライチェーンの破綻」等を事業等のリスクとして特定しています。これらのリスクに適切に対応するため、当社は、社長を委員長とする「高島屋グループCSR委員会」及び「高島屋グループリスクマネジメント委員会」を設置し、コンプライアンス経営の徹底に加え、内部統制の状況や新しい社会課題に対するCSR領域への取り組み状況等をグループ横断的に検証しています。

「高島屋グループリスクマネジメント委員会」では、「グループの成長戦略の実行を阻害する事象」または「事業活動継続と持続的成長を阻害する事象」を重要リスクであると定義し、気候変動に伴う重要リスクを特定、最終的に取締役会へ報告しています。

(2) 重要な気候関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法

気候関連リスクと機会は、当社の事業活動に大きな影響を及ぼすため、「高島屋グループ環境・社会貢献部会」や「高島屋グループCSR委員会」において、グループESG経営重点課題で掲げた環境課題に対し、年度計画に基づく取り組み内容や進捗状況を確認し、取締役会へ報告しています。

「高島屋グループリスクマネジメント委員会」で特定した気候関連リスクは、「発生頻度・可能性」・「事業への影響度」を評価基準にリスクマップを策定し、その重要性を評価しました。

当社は、リスク管理体制を含む内部統制システムの整備に取り組み、気候関連リスクの予防・極小化に向け、グループ横断的に統制を図るとともに、新たなビジネスへのチャレンジ等、事業戦略上発生するリスクに対しては、リターンとのバランスを考慮しながら的確にコントロールするなど、グループ全体のリスクマネジメント体制の確立に取り組んでいます。

(3) 全社リスク管理への仕組みの統合状況

気候変動関連リスクは、当社の事業活動に甚大な影響を及ぼす可能性があり、当社は、「高島屋グループCSR委員会」及び「高島屋グループリスクマネジメント委員会」を通じ、リスク発生時の対応やリスク管理体制の強化に努めています。リスクに対する取り組みとして、脱炭素社会の実現に向けた「RE100」や「EV100」の推進、廃棄プラスチックや食品ロスの削減、循環型ビジネスの構築等に取り組むとともに、自然災害の激甚化に伴う営業機会損失を最小限に抑制するため、店舗や施設のレジリエンスを高める設備投資や、EC事業・グループ経営の強化等に取り組んでいます。

【4】指標と目標

(1) 気候関連リスク・機会の管理に用いる指標

当社は、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量、及び事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率を指標として定めています。

(2) 温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)

百貨店事業を中核に位置付ける当社は、環境負荷を前提とした現行のビジネスモデルをリスクと捉え、環境課題の解決に向けて取り組んでいます。2019年、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力で調達することを目指す国際的イニシアチブ「RE100」に参加し、脱炭素化推進に取り組んでいます。当社の2020年度Scope1・2温室効果ガス排出量は、約19.9万t-CO2、国内百貨店におけるScope3温室効果ガス排出量は、約249.6万t-CO2排出しています。

【温室効果ガス排出量】
範囲 2017 2018 2019 2020
温室効果ガス排出量 CO2 ※ 連結 SCOPE1
排出量(t)
32,966 12,153 24,953 21,055
SCOPE2
排出量(t)
108,672 119,468 205,563 178,090
SCOPE1・2
排出量(t)
141,638 131,621 230,516 199,145
国内
百貨店
SCOPE3
排出量(t)
3,381,936 3,449,427 3,382,417 2,495,547
※ CO2排出量(SCOPE1・2)は2018年までは国内百貨店((株)高島屋・分社含む)の数値となっています。
2019年度より国内外グループ会社も含めた連結ベースで算出しています。
(3) 気候関連リスク・機会の管理に用いる目標および実績

当社は、「RE100」に参加後、2020年にグループ会社の東神開発株式会社が運営する玉川エリア7施設、流山エリア1施設に再生可能エネルギー由来の電力に転換し、2021年度では、NAGAREYAMAおおたかの森アゼリアテラスや、高島屋大宮店、日本橋三丁目スクエア、流山TXグランドアベニュー等に再生可能エネルギー由来の電力を導入・転換いたしました。

当社は、「2030年度にScope1・2温室効果ガス排出量30%以上削減」、「2050年度までにScope1・2温室効果ガス排出量ゼロ」を目標として設定し、毎年度の数値目標を設定したロードマップに基づき、脱炭素社会の実現に向け、取り組んでいます。

当社は、2019年度Scope1・2温室効果ガス排出量を基準に、中長期の温室効果ガス排出量削減目標とRE達成目標を設定し、脱炭素化を推進しています。

【中長期の温室効果ガス排出量削減目標とRE達成目標】
Scope1・2 単位 2019年度 2025年度 2030年度 2050年度
温室効果ガス排出量 t-CO2 230,516 208,961 161,361 0
削減量(19年度比) △21,555 △69,155 △230,516
温室効果ガス削減目標 △9.4% △30%以上 △100%
RE達成率 0% 8.6% 30%以上 100%