高島屋グループ(以下、当社)は、本年創業190周年を迎えました。今日ESG経営がいかにあるべきかを考えるとき、創業以来受け継いできた「店是(てんぜ)」という商いの基本的行動規範に立ち返って考えることが大変重要です。
店是には、「確実なる品を廉価にて販売し、自他の利益を図るべし」「正札掛値なし」「商品の良否は、明らかにこれを顧客に告げ、一点の虚偽あるべからず」「顧客の待遇を平等にし、いやしくも貧富貴賤に依りて差等を附すべからず」とあるように、これらは変えることのない価値観として、今日的なESG経営へとつながっています。
したがって店是の精神を企業活動を通じて具現化していくことは、お客様をはじめとする社会全体を豊かにしていくことになると、私自身、強い信念をもって日々の経営にあたっております。
さらに店是に込められた考え方は、グループ経営理念「いつも、人から。」へと紐づき、企業の意思決定や活動にあたっての基本的価値観、すなわち企業活動における行動規範として、経営者・従業員の中に根づくものとなっています。
現在、当社のあらゆる経営・営業施策は、グループ総合戦略「まちづくり」(以下、まちづくり戦略)を基本としており、そこには「街のアンカーとしての役割発揮」「館の魅力最大化」という2つの考え方があります。
このまちづくり戦略の中核にあり、ブランド価値の源泉として位置づけているのが百貨店事業です。当社は1831年に京都・烏丸の地に古着木綿商として創業し、その後百貨店グループへと進化を遂げています。過去から現在まで、一貫して百貨店という存在やその価値にこだわり続け、変化対応してきたことが、ステークホルダーの皆様からのご支持・ご支援へとつながりました。
長く、ときには苦難もあった歴史の中で築きあげてきた信用・信頼は当社ならではの強みであり、まさに財産です。このことは、日本のみならず海外においても、百貨店やグループ事業を通じてまちづくり戦略を推進する当社が、社会の公器として幅広い影響力や強い責任感、透明性・公正性をもって地球上のさまざまな社会課題に取り組むうえでのまさに原動力となっております。
コロナ禍において社会や消費者の価値観やライフスタイルは大きく変容し、デジタルトランスフォーメーションも加速しています。アフターコロナを見据えたときに、こうした経営環境をしっかりと認識し、変化対応力と創造力を発揮し企業活動に生かしていくことは必ずや企業の成長へとつながっていくでしょう。
創業以来、幾度も危機が訪れた中で、当社は常に「革新の連続が当社の伝統」であることを経営と従業員が全員で確認しながら、難局を乗り越えてまいりました。まだまだ世の中にとっても、企業にとっても先行き不透明で厳しい環境が続きますが、今後も社会における当社の存在意義を自問自答しながら、新しい価値を創造し豊かな社会の実現に貢献していけるよう努めてまいります。
引き続き、皆様のご支援・ご愛顧のほど、よろしくお願い申しあげます。
取締役社長 村田 善郎