当社グループでは、創業者の初代飯田新七により制定された「店是」が時代を超えて受け継がれております。これは「創業の精神」とも呼べるものですが、その内容は今日のESG経営を明示しています。たとえば、「確実なる品を廉価にて販売し、自他の利益を図るべし」は近江商人の「三方よし」に通じる考え方ですが、現代においてはまさしくCSRや公益性に合致するものといえます。また、「商品の良否は、明らかにこれを顧客に告げ、一点の虚偽あるべからず」を言い換えれば、お客様第一主義や消費者保護ということになる でしょう。さらに、「貧富貴賤に依りて差等を附すべからず」は、「グループとして特定のお客様層に偏重することなく、広く国民大衆にとっての身近な存在であるべき」という社会性に根差した当社グループのあり方を規定するものです。こうした創業以来の基本的な考え方の下、当社グループは時代の潮流を見極めながら革新的な取り組みを行ってまいりました。明治期、創業から半世紀のうちに海外にまで販路を拡大していったことや、戦前、横山大観をはじめとする日本美術院のそうそうたる画家たちとの交流を深めたこと、戦後には、先駆的な郊外型SCである玉川髙島屋S・Cを開業させたことなど、進取の精神によって活路を切り開いてきました。現状に安住することなく、常にチャレンジャーの立場で新たな事業に果敢に挑戦してきたことが 現在までグループとして存続できた理由であると考えております。
2024年、中長期的視点で当社グループが「めざす姿」をビジョンとして明確に定めることを目的とし、創業200周年となる2031年の<グランドデザイン>を策定、当社グループのめざす姿を『全てのステークホルダーの「こころ豊かな生活を実現する身近なプラットフォーム」』と設定しました。この「プラットフォーム」には、「あらゆるステークホルダーの生活の土台として、人が出会い、つながるハブ(結節点)となる場所でありたい」という想いを込めています。
このグランドデザイン実現に向けた新たな中期経営計画を2024 年度スタートさせました。 2026 年度まで
の3カ年はグランドデザイン実現への「基礎固め」の時期と位置づけており、将来の成長に向けた種まきと、社内資本のさらなる可視化および増強に注力していきます。具体的な主要課題としては大きく3点あり、経営の基盤となる「ESG経営の推進」、当社グループの成長を支える「人的資本経営」、そして、「まちづくり」を通じた成長加速です。
「ESG経営の推進」では、消費文化の担い手として社会的影響力の大きさを自覚する中、エコ&エシカルな商品・サービスによりお取引先・お客様とともに取り組むサステナブル活動「TSUNAGU ACTION」など、多面的かつ主体的な取り組みを進めてまいります。サプライチェーン全体での環境負荷軽減のほか、地域の伝統文化・技術の継承、人々の自由な暮らしにグループ全体で貢献し、事業成長と社会課題の解決を両立させてまいります。また、「人的資本経営」については、当社の価値創造において最も重要な資本と考える従業員一人ひとりがパフォーマンスを最大化できるよう、能力育成やキャリアサポート、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進など、さまざまな側面から施策を積み重ねていきます。
特に、従業員のエンゲージメント向上はパフォーマンスアップのみならず、人材定着化の観点でも一層注力していかなければならない課題と認識しております。ここでいう「従業員」は、必ずしも当社雇用職員のみを指しているのではありません。百貨店事業におけるお取引先の派遣販売員、また、商業開発事業におけるテナント従業員など、当社雇用でなくとも当社の事業に従事いただいている方々が多くいらっしゃいます。そうした方々にも喜んでいただける労働環境の改善を、今後も力強く進めてまいります。そして、「まちづくり」については、当社の存在意義を明確に示す手段であり目的でもあります。データ連携や新たなコンテンツ導入を進めながら、百貨店を核とした魅力ある次世代型SCをグループの総力で創りあげることを通じ、あらゆるステークホルダーの皆様の期待と信頼に応える当社グループのブランド価値を高めていきたいと考えます。
今後もすべての価値創造の基盤であるグループESG経営を推進し、持続可能な豊かな社会の実現に貢献していけるよう努めてまいります。引き続き、皆様のご支援・ご愛顧のほど、よろしくお願い申しあげます。
代表取締役社長 村田 善郎