松浦弥太郎さんに伺った「贈りもののきほん」

松浦弥太郎さんの著書にはしばしば「きほん」が出てきます。松浦さんにとって「きほん」とは心の姿勢のようなもので、とても大切なもの。そんな松浦さんは、「日々、いろんなものを見たり、気づいたり、触れたり、出会ったりしていくなかで、その心の姿勢はどうあるべきか、常に考え続けている」と言います。自分自身に「きほん」を問い続けている松浦さんに、「贈りもののきほん」について伺いました。

協力:All About
取材場所:自由学園明日館

【プロフィール】

松浦弥太郎

2005年から「暮しの手帖」編集長を9年間務め、2015年7月にウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。2017年、(株)おいしい健康・共同CEOに就任。「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会を行う。中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」代表でもある。

松浦さんの、「贈りもののきほん」を教えてください

差しあげたい時に差しあげるようにしています

感謝の気持ちが湧くという関係性は日々あると思います。そうしたなかで、お店に行った時などにいろんなものを見ていて、「これを差しあげたら、あの人が喜んでくれるな」と思うと買います。そういうカタチで日常的に贈りものをしていますね。僕は変わっているのかもしれないけれど、クリスマスとか記念日はうっかり忘れてしまう。人の誕生日は覚えてなくて、自分の誕生日も忘れてしまう。だから、日々差しあげたい時に差しあげないと、贈ることができません。差しあげたい時に差しあげる。これが僕の「贈りもののきほん」です。

こういうの見つけてきました!

例えば百貨店に行って、誰かが喜んでくれるものを探そうと思い売場を歩き回るのは、すごく楽しいものです。隅々まで見てしまう。そういう時間がすでにプレゼントだと思います。感謝の表れというか。見つからなくても温かい気持ちになります。そうして見つけたら、「こういうの見つけてきました!」と、誕生日じゃなくても差しあげればいいんじゃないですかね。

どのような贈りものを差しあげることが多いですか?

基本的には、お花を贈ります

日常的に差しあげるのが好きなので、いろいろなものを見ていますけど、多いのはお花ですね。「こういう花がいいんじゃないか、こういう色がいいんじゃないか」とその人のことを考えているわけだから、いい贈りものだなと思っています。自分の感性みたいなものが表れるので、それなりに自分らしさが出るんじゃないかな。それに、お花をもらって困る人も少ないと思います。

自分の生活が表れますね

お花を差しあげたいからと、お花屋さんに行っても、急には選べないですね。季節の花を知るべきですし、どういう花をどういう長さにしてもらって、どういう組み合わせをすれば、バランスが良くて、キレイで長持ちするかというのは普段からお花を買っていないと選べないんですね。自分がちゃんとお花に興味を持って知って生活しているというのがあってこそ、お花を贈ることができます。

これは美しいものだという確信があるもの

自分で美しいという確信を持てているものじゃないと、差しあげても中身がない気がします。自分の中で、自分が感じているものを差しあげると、感謝がより伝わるのかなと思っています。そういった自分の生活のなかにあるものを差しあげるのは、気持ちがラクですね。いろんな人の考え方があると思いますけど、僕はそう思います。

贈りものをいただいた思い出を教えてください

50歳の誕生日にもらったマフラー

今日持ってきたカシミヤのマフラーは、妻と娘からもらったものです。わが家は、僕の誕生日にお祝いの食事をしたりはしますけど、プレゼントは特にありません。好きなものにこだわりのある僕を家族はよく知っているからでしょうね。ですから、食事やお出かけなどの体験という贈りものが多いのです。でも50歳の誕生日の時に、めずらしくプレゼントをもらったんです。

すごく大切に使っています

50歳以降は、何ももらってないですけど‥。自分の人生の節目の時に、しかも僕は12月生まれなので、冬に使うものを贈ってくれたというのは、うれしかったですね。すごく大切に使っています。スチームをあてたり、ブラッシングをして手入れをしています。お父さんだったら、奥さんと子どもからプレゼントをもらうのは、とても喜ぶんじゃないですか。ちょっといいものだったりすると、うれしいですよね。自分を認めてもらえている気がして。

松浦さんにとって、贈りものとはどういうものでしょうか?

精いっぱいの感謝なんでしょうね

贈りものは、やっぱり感謝なんでしょうね。自分が精いっぱい感謝をするだけです。お花を差しあげたいというのは、突き詰めると僕のわがままであって、そこで喜んでくれたとか、こういう言葉を返してくれたとか。そこまでは望めません。

相手のことを考え抜きます

できるだけ、その方の負担にならないもの、迷惑にならないもの。そこは工夫が必要ですね。言いづらいですけど、これからどこか行くのに重くてかさばるものなどの手土産を渡されたりとか。ありがたく頂戴しますけど、僕だったらそうはしないなと思います。形式にとらわれると相手に迷惑をかけてしまう。こちらの都合でものを差しあげないように心がけています。

最後に、贈りものについて、みなさんにアドバイスはありますか?

いろんな贈りものをしてきました

人に言ったら笑われるプレゼントはいくらでもあります。いくらでも。でも、みんなそうじゃないですか。こんな高いものあげたら、好かれるんじゃないかな。仲良くしてくれるんじゃないかな。若い頃は、そういう期待を持って贈りものをすることばかりじゃないですか。

マネされても困る

たくさんの贈りものをしてきたなかで、「おおげさ」と思うこともあったので、最近は先ほど話したように収まっています。地味だと思うんですけど、地味な贈りものが正しいとかすてきというわけではないんです。いきなりそこに行き着いたわけではない。いろんな贈りものをしてきた結果として、今こういう気持ちでいるだけだから、僕のマネをしなくていいと思います。贈りものは自由に楽しむべきです。

あげたいものを、あげればいいんじゃないでしょうか

何が大事かというと、誰かのお手本とか、素敵な贈りものの仕方とかにとらわれずに、自分の素直な気持ちで、あげたいものを買っていいんじゃないでしょうか。でも、どんなプレゼントも、その始まりは感謝だと思うんです。「感謝のない贈りものをしないようにする」、それだけでいいんじゃないですかね。

“贈りものは、精いっぱいの感謝”

松浦さんが語ってくださった「贈りもののきほん」。それは「精いっぱいの感謝」でした。忙しく日々を過ごしているとつい忘れてしまいがちな気持ち。人やものごととの出会いの多くはきっと、あたりまえではなく「ありがたい」ことです。色んな経験を積み重ねていって、自分の周りのありがたいことにちゃんと気づけるようになる。気づこうとする。そして伝える。この素敵な「きほん」を心に留めながら、あなたなりの感謝を、時々は贈りもので伝えてみませんか?

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