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2022.10.25

デニム再生プロジェクト (4)染色

MD本部バイヤー / 橋 祐介

デニム再生プロジェクトの
続編レポートをお届けします!
第4弾は「染色」。

向かったのは
広島県福山市で染色加工場を営む「坂本デニム」。
今年で創業130年(!)を迎えた
日本が世界に誇るインディゴ染色の名門企業です。
今回も、プロデューサー 本澤氏と現地入りしました。

上の写真は、工場に隣接している社員寮。
大きく掲げられた社名のフォントがとても素敵でした。
(なんと三代目社長の手描き!)

工場では、坂本デニム株式会社 取締役 坂本磨耶様に
ご案内いただきました。

ここでは
クラボウ様の愛知県・安城工場で再生したデニム糸を
よりデニムらしい色合いにするため
ロープ染色を行います。工程は大きく4つ。
①整経 ②染色 ③分繊 ④糊付

まずは、①整経。
糸を染めやすい状態にセットする大切な工程。
染ムラをなくし、スムーズに染めることができるように ビーム(幅2.5mの金属整筒)に巻き取ります。
機械でスムーズに巻き取る様子をぜひ動画
からご覧ください。


また巻き取る際には
ブルーの再生糸と白い通常糸を別々に巻き取っておき、
この後の工程で均等に並べるための
前準備をしておきます。
これは、通常のデニムと
同様のアタリ感 (製品を洗ったり、擦ったりした時に
でてくる色落ち感)を再現するため。
L∞PLUS (*)ならではの工程です。

いよいよ、②染色。
デニムの染色と言えば、ロープ染色!
デニムに関わる人なら
一度は聞いたことがある?かと思います。
具体的には、綿の糸をロープ状に束ね
インディゴ染料入りの液槽に何度も浸して染めること。
最初に引き上げた糸は、黄色~黄緑色ですが
インディゴ染料は、
空気に触れると酸化してブルーに変化するので
この工程を何度も繰り返すことで、濃度の高い、
きれいなインディゴブルーに仕上がるのです。

また、デニムは着たり洗ったりを繰り返すと
色が落ちて独特の風合いになりますよね。
それは、芯白(しんじろ)といって
糸の中心を白いままに表面だけを染めるからなのですが これもロープ染色の為せる技。
浸透圧で周りから染まり、芯に行くほど薄く、
染まり切らない芯が残るからなのです。

と、技法を整理したところで実際の工程へ。
①整経 で巻き取った糸を、坂本デニム様が
独自開発したロープ染色機で染め上げます。
どれくらいの高さから糸を浸すのか。
それをどれくらい繰り返すのか。
長年、研究を重ねて生み出された大切な技法なので
詳細をお伝えできませんが、
坂本デニム様がなぜ世界から注目を浴びるのか、
その答えはきっとここにあるのだと思います。
染め上がった鮮やかなインディゴブルーの糸が、教えてくれました。

さて、ロープ染色を終えた糸は、③分繊へ。
染め上がった束を、再びビームに巻き取っていきます。
一定の密度と張力で巻き取っていく重要な工程。
一本ずつ、美しい糸が巻き上げられる光景は圧巻です。


最後は、④糊付。
染められた糸の毛羽をを取り、滑りをよくして
糸の強度を上げるために、糊をつけます。
これが生地を織る際の作業効率に大きく影響するとのこと。
大きなビームを機械にセットし、品質は人の目で確認。
職人お二人の阿吽の呼吸で、瞬く間に糸が仕上がっていきます。

最後に、環境の話を少し。
デニムの染色は、化学薬品の使用やCO2排出の面で
環境負荷が大きいという指摘があります。
僕たちも、もう一度インディゴの色に染めることに
少し葛藤があったのも事実です。
その時出会ったのが、坂本デニム様の「エコ染色システム」でした。

通常のロープ染色は
高温水と多量の洗浄薬剤を使用するのが一般的ですが
「エコ染色システム」は、常温で洗浄効果のある
電解水を使用する仕組みを開発。
染色洗浄工程において、CO2排出量を35%削減、
洗浄薬剤や水の使用量も大幅に削減されています。

また、染色の工程でどうしても出てしまう
汚泥(排水の処理過程で発生する廃棄物)の削減にも取り組まれていて
「マジックバイオくん」という生ごみ処理機を活用し、
バイオ処理をすることで、堆肥化も実現。
家庭から出る生ごみと排出汚泥をあわせて、
活用されているようです。
(社員の方も毎日のように、生ごみを持参して出勤されているとのこと!素晴らしすぎます!)

魅力的な素材を生み出すだけではなく
自社でできる環境配慮への積極的な取り組み。
僕自身、担当者として感銘を受けっぱなしでした。
我々百貨店も、学ばなければならないことばかりです。
動画ではなかなか伝わらない、少し専門的な内容では
ありましたが、大切なことなのでお伝えさせていただきました。



以上の工程を経て、出来上がった糸は、
その後、同じ福山市の
篠原テキスタイル株式会社様に送られ、
次の工程に進みます。続きはまた次回、(5)織布にて。



*L∞PLUS DENIMは、クラボウ(倉敷紡績株式会社)が展開する、デニムの裁断屑、製品を反毛して綿に戻し、デニム用の糸に再利用するUPCYCLE SYSTEMのプログラムです。

BUYER HASHIS  PROFILE

橋 祐介 / バイヤー

橋 祐介 / バイヤー

古着屋でのアルバイトに没頭した学生生活の後、特選(ラグジュアリーゾーン)のバイヤーと兼務で、本プロジェクト担当。名画座と純喫茶が好き。

岡田 ひかり / 化粧品バイヤー

岡田 ひかり / 化粧品バイヤー

化粧品の自主編集売場を担当。もんじゃ焼きが好き。趣味はクラシックバレエ。人生もバレエもバランスが大切。