展示場所:
本館1F GRAND PATIO
展示期間:
2022年6月1日〜8月31日
キュレーター高須咲恵さんが、国内外の注目アーティストを毎回1人ピックアップし、インタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのは、独自の手法を用いた冒険的な写真作品を発表し続けている、写真家の赤木楠平さん。海外で過ごした経験や創作活動の原動力についてお聞きします。
Kenko hand bag
Kenko hand bag
キュレーター高須咲恵さんが、国内外の注目アーティストを毎回1人ピックアップし、インタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのは、独自の手法を用いた冒険的な写真作品を発表し続けている、写真家の赤木楠平さん。海外で過ごした経験や創作活動の原動力についてお聞きします。
展示場所:本館1F GRAND PATIO
展示期間:2022年6月1日〜8月31日
僕は犬が大好きで、小学校低学年ぐらいの頃、よくドッグショーに連れて行ってもらっていました。そこでたくさんの犬の写真を撮っていたのが、カメラに触れた最初の体験です。その後、高校時代をシンガポールで過ごしたのですが、友達とミニコミ誌を作ることになり、「じゃあ、僕がカメラマンをやるよ」と手を挙げたのが、写真家としての始まりでした。
子どもの頃はサウジアラビアやシンガポールで過ごし、帰国して日本の大学を出た後は、イギリスに長い間住んでいました。海外のさまざまな都市で暮らして、数え切れないほどの人との出会いがありましたね。2008年に帰国してからは、地元だった用賀に腰を落ち着けて、妻と「BY cafe」というカフェを構えました。一方で、音楽やファッションといった、あらゆるジャンルで活動しているアーティストたちとの縁もあり、彼らと過ごす時間が刺激にもなっています。
Kenko(健光)
「Kenko(健光)」シリーズが生まれたのは、帰国後、カメラを片手にいろんな街を歩いて、写真でしか表現できないものを模索していた頃でした。ある日、妻と皇居のあたりをドライブしていたら、突然「レンズを外して光を撮ったら、おもしろいんじゃないか?」とひらめいたんです。居ても立っても居られず、そこですぐに試し撮りをしました(笑)。
創作に限らず、僕はいつだって自分にとってフレッシュなものを選びたいと思っています。そのために大事にしているのが、自分の心が感動する瞬間を逃さないこと。今の世の中、たいていのものは“良い”んです(笑)。でも、それといつどう出会うかが肝心。今日「良い」と思ったものでも、明日にはその良さが錆びてしまうかもしれません。自分が一番感動するものを、一番感動した時に選びたいんです。
シンプルに、その時目の前にあるものを撮っています。僕は、「偶然」が好きなんです。僕の代表作の一つ「Zenzen(然然)」シリーズは、同じフィルムに何回も重ねて撮影する手法を取っているのですが、2回目、3回目と撮影するのに、ものすごく間隔をあけるんです。前回、このフィルムで撮ったものを覚えていると、意識して不自然になってしまうから。一度撮ったフィルムは箱の奥にしまい、存在も忘れかけた頃に取り出して、また目の前にあるものを撮影します。現像するまで、自分でもどんな作品が出来上がっているのか分からない。その「偶然」と「自然」を掛け合わせて「Zenzen(然然)」と名付けました。
Zenzen(然然)
やっぱり、人との出会いですね。そして、周りの人からもらってきた優しさが、新しいことにチャレンジする力になっています。大学時代は、写真に関する勉強をしていましたが、それを飛び越えて自分の表現を探すことの方が大変でした。人と過ごしたり話したりする時間や経験が、壁を越える後押しをしてくれたと感じています。
巳69 with MOZYSKEY
実は、玉川高島屋S・Cは、幼い頃に祖母とよく出掛けていた思い出の場所。時を越えて新しくなった「GRAND PATIO」で、自分の作品を展示できることがとても嬉しいです。今回の展示では、新しい試みとして「Kenko(健光)」シリーズの新作をお届けします。楽しみにしていてください。
1977年生まれ。 巳年、写真家。
シンガポールやロンドンで多国籍な環境で育ち、近年は二子玉川周辺を拠点として活動している。
2013年からはポーランドに拠点を置くアーティスト集団「Czułość(感度)」に初の外国人メンバーとして参加。赤木はレンズを外した状態で街の光を採集した「Kenko(健光)」や、偶発性と自然をテーマに多重露光した写真「Zenzen(然然)」など、ユニークなアイデアで実験的な作品を多く制作している。また瀬田で家族が運営するカフェ「BY cafe」には、赤木や友人の作品が常時設営され、作品に囲まれた時間を過ごすことができる。
Czułość(http://czulosc.com/)
赤木楠平による初の写真集。
赤木の色彩とチャーミングな世界観が写真としてのドキュメンタリーとして収録されている。
アーティスト、キュレーター。2011年東京藝術大学大学院美術教育研究室修了。街の中でおこなわれる表現「ストリートカルチャー」に関するリサーチや、展覧会の開催、作品制作をおこなう。主な展覧会に、2017年石巻市「Reborn-Art Festival」アシスタントキュレーターとして参加、2018年市原湖畔美術館「そとのあそび展」共同キュレーションなど。