展示場所:
本館1F GRAND PATIO
展示期間:
2023年3月1日〜
5月31日
コーディネーター高須咲恵さんが、毎回1人の国内外の注目アーティストをピックアップし、そのアーティストへのインタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのは陶芸から彫刻、写真などさまざまな形で作品を制作し続けているアーティストの高岡太郎さん。これまで辿ってきた道筋や物事の見えない部分にまで向けられた視点などについてお聞きします。
※高岡太郎の「高」はハシゴダカ
Stock 2017年
Stock 2017年
コーディネーター高須咲恵さんが、毎回1人の国内外の注目アーティストをピックアップし、そのアーティストへのインタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのは陶芸から彫刻、写真などさまざまな形で作品を制作し続けているアーティストの高岡太郎さん。これまで辿ってきた道筋や物事の見えない部分にまで向けられた視点などについてお聞きします。
※高岡太郎の「高」はハシゴダカ
展示場所:本館1F GRAND PATIO
展示期間:2023年3月1日〜5月31日
高校時代です。漠然と「デザインってかっこいいな」と思いデザイン系の学科に入ったのですが、授業で陶芸に出会いとても新鮮に感じたんです。成形から完成まで、全てを自分の手でできるということも、窯で焼くということも、当時は非日常的で面白くて。それでハマって、陶芸部の部長までやりました。
陶芸に限らず、工芸というジャンルは練習のために模倣を行うのですが、完成されたきれいな作品をパッと見ただけでは知ることのできない、ものすごく長い制作工程そのものに、自分は興味を持っていることに気付けたんです。一つの作品のなかでそうした工程までも表現したいという意味で、「作家」ではなく「アーティスト」という肩書きを選びました。
Arrested 2013年
あえて挙げるならば、『Labor(2009)』という作品です。これは新潟の雪深い地域に知人の作品制作を手伝いに行った時、その地方で林業のために使っていた“そり”をモチーフにして生まれました。「Labor」というのは「労働」という意味です。そりには、遊ぶときの楽しげなイメージもあるけれど、労働のための道具としては辛いイメージとして捉える人もいるかもしれません。ですが、「人の心を動かす」という意味では、ポジティブなだけではなく、いろいろな感情を与えてくれるのがいい作品だなと思っています。
制作工程は、最終的には「作品」として完成させるものであっても、一つ一つに造形的な意味合いを込めすぎずにパーツを作り、それを集めてインスタレーション的にひとつのものにする感覚があって。そういう即興的なところを大事にしています。
Labor 2009年
いま考えると、幼少期の家庭環境も少なからず考え方に影響しているかなと思いました。僕の実家ってすごく普通で、絵の具などいわゆる美術道具が常にあるような環境ではなかったんです。だから、家に転がっている洗濯バサミとかの生活用品を本来の用途とは違った使い方をするなど、自分の妄想のなかで広げて遊んでいたんです。そんな幼少期の体験が、純粋に一からものを作るというよりは、あるものを何かに見立てたり、あるものを組み合わせて一つのものに仕立て上げたりする僕の作風に通じているのだと思います。
山に行き始めたのはここ15年ぐらいです。登っていると見えてくるのが、僕が2〜3日かけて歩かないと辿り着けないような場所にも、すでに人の手で開発された形跡があること。登山道を作るとか、山小屋を建てるとか、巨大な事業があったうえで山に行かせてもらっていることを実感し、圧倒されます。自然とはいえ、とてつもなく人の手が入っている。これもある意味“労働”であり、すごく興味をそそられます。
2019.08
もともと、工事現場や工場に資材が置かれているとか、トラックに何かが積んであるとか、いわゆる“見せる”ことを目的としていない状況にとても魅せられる自分がいます。美術という範囲で考えてみても、ひとつの作品を作るためには、まず素材を扱っている人がいて、それを流通させる人がいて、作家の手に渡る必要がある。「作品に至るまでに、実はもっとかっこいい状態があるんじゃないかな」という妄想が、僕のあらゆる作品の発端になっています。
2002.02
Rank-2 2016年、Freight 2018年
“完成された作品”というより、完成状態なのか、制作途中なのか、それとも材料の状態なのか、ということを疑問に思いつつ見てもらえるような展示ができたらうれしいです。実は玉川高島屋には、学生時代から続けている催事場や展示などの設営の仕事で、毎週通っているんです。なので、仕事場で自分の展示をするのはすごく不思議な感じがあり、僕自身もすごく楽しみにしています。
1983年東京都四谷生まれ。2010年東京藝術大学大学院美術研究科修了。陶器、土を主な素材として扱いながらも、木材など多様な素材、写真を表現手段としている。モノの美術表現以前の存在と造形に興味をもち、素材、作業過程を並列的に捉え、制作行為の全てを可視化し表現へと昇華させる試みを行っています。移動、労働、宗教等、様々な人間の行為のイメージの素に作られた仮設的な造形は“工芸”の分野が持つ根源的なバックグラウンドを暗示させます。
※高岡太郎の「高」はハシゴダカ
自身がアーティストやキュレータなど様々な立場で活動している背景から、企画から制作まで多様なプロセスをアーティストと共にし、「空間と人と作品の関係」を模索。リサーチベースのプロジェクトにも数多く参加し、特に都市における公共空間で複数の実験的なプロジェクトを展開。アートユニット「SIDE CORE」の一員として活動する他、宮城県石巻市で開催されてた「Reborn-Art Festival 2017」アシスタントキュレータとして参加、沖縄県大宜見村で開催されている「Yanbaru Art Festival」内では廃墟での会場構成を行うなど多くのプロジェクトに携わっている。