展示場所:
本館1F GRAND PATIO
展示期間:
2022年9月1日〜11月30日
キュレーター高須咲恵さんがピックアップした、国内外の注目アーティストへのインタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのは、土やマスキングテープなどの素材を駆使しながら、まるで自然の生態系を切り取ったような迫力のある作品を手掛ける淺井裕介さん。その脳内に広がる思考についてお聞きします。
【本展映像作品のためのインスタレーション】
【本展映像作品のためのインスタレーション】
キュレーター高須咲恵さんがピックアップした、国内外の注目アーティストへのインタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのは、土やマスキングテープなどの素材を駆使しながら、まるで自然の生態系を切り取ったような迫力のある作品を手掛ける淺井裕介さん。その脳内に広がる思考についてお聞きします。
展示場所:本館1F GRAND PATIO
展示期間:2022年9月1日〜11月30日
高校時代は陶芸部に所属していたのですが、高校2年生の時、ひょんなことから文化祭で高さ3.6m×横6mほどのベニヤ板を14枚繋げた巨大なキャンバスに絵を描いたんです。その時に「描く楽しさ」に触れ、絵を描き始め、その後、部活で土に触れていた経験と合わさって、今の泥絵というスタイルに繋がりました。
僕は東京の杉並区で育ったのですが、都会育ちの子どもの多くは、自分の周りに「自然がない」ことを特に意識しないで育つと思うんですよね。でも、大人になって当時を振り返ってみると、家の裏の空き地でいろんな植物や虫を見つけたり、川を遊び場にしていたり、実は自然に飢えていたのかもしれません。飢えがあるからこそ気づくような小さな自然を大切に捉える気持ちは、その時に培われたのかもしれないですね。
マスキングテープ作品
「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」展示風景
東京都庭園美術館、2020 photo by 森本美絵
そもそも僕は、ものを作る行為そのものに興味があって、何もないところからポンッと生まれる点や線に感動を覚えるんです。“都会には無い”と言われる植物が実はちゃんと存在していることや、日々変化していく植物の様子が、僕が芸術において感動する瞬間とリンクしていると気がついた時から、自然を作品の題材にするようになりました。
これは意外と難しいことですが、とにかく無心になって手を動かして描いている時間が幸せですね。制作途中にこそ、作品からメッセージを受け取ることがあると思うんです。スピリチュアルな意味ではなくて、例えば「こういうごはんを作りたい」と思って料理し始めたけど、作っているうちに別の味つけに変化していったり、ゆっくり煮込もうと思ったけど、実は今食べたほうがおいしいじゃんって気づいたりする瞬間。それは自分の意思の外にあるものが、こちらにものを言っているという状況ですよね。その言葉を素直に取り入れていったほうが、ものを作る人間としては勉強になります。なので、なるべく自分の外側の意識や声を聞くようにしています。
大きさにこだわっているわけではなくて、細かい絵を延々と繋いで描き続けることができるから、大きい作品を作ることが好きなんだと思います。以前、30m×40mくらいの壁画を描いたのですが、その壁の後ろは倍ぐらいの高さのビルがあって。頭の中では、そのビルにも絵を描いているんです。キャンバスの外にも絵を想像するということは、僕の創作活動にとってすごく大事。どこまでもイマジネーションを広げていけるからこそ、実際の絵も飽きずに描けるんですよね。
壁画ーTENNOZ ART FESTIVAL 2019 photo by shin hamada
泥絵ー《空から大地が降ってくるぞ》「WULONG LANBA ART FESTIVAL 2019」展示風景、重慶、中国、2019
僕の作品には、まだ描き足せる余地が残っていたり、逆に完成をとっくに通り越してやりすぎていたり、ある種の完成というこだわりに対する自由があると思っています。作品を見た人が、自分でも絵を描きたくなったり、しばらく距離を置いていた趣味をもう一度始めたくなったり……そんな何かの続きに向かって「一歩踏み出してみよう」と思えるようなメッセージが、作品から伝われば嬉しいです。
陶器作品
GRAND PATIOは、のんびりとした時間が流れていて、足を踏み入れるとちょっと休んでみようかなという気持ちになれる場所だと思うので、「時間の速度」を感じる作品を作れたらいいなと思っています。実は二子玉川では、ちょっとおもしろい色の泥岩が採れるんですよ。今回の作品には、その土を使ってみるのも面白いかもしれないですね。
1981年東京都生まれ。同地在住。土、水、埃、小麦粉、テープ、ペンなど身近な素材を用い、あらゆる場所に奔放に絵を描き続ける。旅のチケットやコースターの裏に描かれた小さなドローイングから、室内を覆い尽くすような巨大壁画まで、作品を受け止める場所や環境にしなやかに呼応するように、その作品のスケールは様々であり。尽きることなく生み出される、植物、動物、人間、また動植物と人間のハイブリッドを思わせる神話的なイメージなどの根源的なモチーフが画面に隙間なく配置され、大きな生き物の中に入れ子状に小さな動植物が現れるなど、ミクロの中にマクロが存在する生態系を表しているように見える。
アーティスト、キュレーター。2011年東京藝術大学大学院美術教育研究室修了。街の中でおこなわれる表現「ストリートカルチャー」に関するリサーチや、展覧会の開催、作品制作をおこなう。主な展覧会に、2017年石巻市「Reborn-Art Festival」アシスタントキュレーターとして参加、2018年市原湖畔美術館「そとのあそび展」共同キュレーションなど。