展示場所:
本館1F GRAND PATIO
展示期間:
2022年3月5日~5月31日
キュレーター高須咲恵さんが注目する国内外のアーティストへのインタビューと作品を紹介します。今回登場するのは、未知の世界と人間らしさが融合した油絵を制作するSablo Mikawaさん。これまで辿ってきた道筋や作品の世界観に影響を与えたものについてお聞きします。
Doberman No.7
Oil on canvas
Doberman No.7
Oil on canvas
キュレーター高須咲恵さんが注目する国内外のアーティストへのインタビューと作品を紹介します。今回登場するのは、未知の世界と人間らしさが融合した油絵を制作するSablo Mikawaさん。これまで辿ってきた道筋や作品の世界観に影響を与えたものについてお聞きします。
展示場所:本館1F GRAND PATIO
展示期間:2022年3月5日~5月31日
油絵を描き始めたのは小学生の頃、通っていた絵画教室で大人が描いている姿に憧れたのがきっかけでした。そして小学3年生の時に訪れたピカソ展で見た、森の風景が描かれた1枚の絵が今も強く印象に残っています。異国の未知な雰囲気が子ども心に刺さり、その場に数分立ちすくんでいました。はっきりとアートの魅力を確信した、初めての瞬間だったと思います。
一番は、油絵のゆっくり乾いていくスピード感。自分のマイペースな性格と合っているのだと思います。幼少期から続けていることなので、身体に馴染んでいるのもありますね。
Flight No.4
Oil on canvas
スケートボードは、中学時代に友達とよく遊んでいました。作品のモチーフにするのは、10代から20代前半ぐらいまでの大人になる過程で親しんだものが多いですね。特に高校卒業後、この先も油絵を描き続けるか迷っていた頃にヨーロッパの国々やエジプトを巡った一人旅は、作家としての僕に大きな影響を与えています。
現地の絵描きやデザイナーと出会って、かなり刺激を受けました。旅を通じて、描く感覚を取り戻すことができたというか。帰国して少し時間をあけてから、久々に油絵を描いてみたら驚くほど没頭できたんです。その集中する感覚がしっくりときて、「この感覚があれば、油絵を描き続けていける」と感じ、今に至ります。
不器用さや情けないところが垣間見えた時ですね。あと、「かっこつけてないところがかっこいい」みたいな感覚もあって……僕、1970年代に流行ったロンドンのパンクロックバンド「ザ・クラッシュ」のギターボーカル、ジョー・ストラマーが好きなんです。リードギターが弾けなかったからかき鳴らすという意味の“ストラム”を名前の後ろに付けて突き進んだという、荒削りだけど情熱的な人間性に惹かれます。僕は幼い頃から絵を習っていたけれど、決してアカデミックではなく荒削り。それが不安だった時期もありましたが、今は「僕にはそういうスタイルしかできない」ということを前向きに思えるんです。
HOMAGE No.5(雲海の上の旅人Ⅱ)
Oil on canvas
自分を巨人に見立てて描いた『Giant36』シリーズが、僕のメインワークです。また、19世紀ドイツの風景画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒによる自然と人間の対峙を描いた作品をオマージュした『HOMAGE』シリーズも気に入っています。一枚の絵の中にストーリーを生み出すこと、行ったことのない場所や不思議な世界を描くことは、これからもどんどんチャレンジしていきたいです。
『HOMAGE』シリーズの新作がメインで、初めての映像作品も制作中です。『HOMAGE』シリーズは今までにも何度か個展で展示したのですが、鑑賞者一人ひとりが想像や考察を膨らませてくれたことが印象的でした。二子玉川は、自分の「好き」が明確で、落ち着いた時間を楽しむ人が暮らしているイメージ。この展示でも、作品を自分なりに解釈してゆったり楽しんでもらえたら嬉しいです。
埼玉県生まれ。東京在住。小学生の頃に油絵を学ぶ。
Sablo Mikawa(サブロミカワ)は近世近代の絵画から影響を受けており、現代における物事を、漫画や映画などの仮想現実も含め、ドラマチックに油絵で描く作風で知られている。
Sabloの描く人物の顔身体には、グロテスクなエフェクトがかけられており、現存する人間とは違うキャラクター性、内面性、シルエットが強調され描かれている。これらの効果はSabloが敬愛する西洋絵画、映画、音楽、漫画などから着想を得ていることに由来し、現代に行き目に映るものや感情を表現するためにサンプリングされ、作品に落とし込まれている。
主な個展に、「Oilpaintings」(OIL by 美術手帖ギャラリー、東京、2022)「JOURNEY」(BAF STUDIO TOKYO、東京、2021)、「UNCOUTH FELLOW」(THE blank GALLERY、東京、2019)、「Hard liner」(Alt_Medium、東京、2017)など。18年には、ラッパー・田我流のシングル『Simple Man』のアートワークを手がける。
アーティスト、キュレーター。2011年東京藝術大学大学院美術教育研究室修了。街の中でおこなわれる表現「ストリートカルチャー」に関するリサーチや、展覧会の開催、作品制作をおこなう。主な展覧会に、2017年石巻市「Reborn-Art Festival」アシスタントキュレーターとして参加、2018年市原湖畔美術館「そとのあそび展」共同キュレーションなど。