展示場所:
本館1F GRAND PATIO
展示期間:
2022年12月1日〜
2023年2月28日
キュレーター高須咲恵さんが、毎回1人の国内外の注目アーティストをピックアップし、そのアーティストへのインタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのはスケーターの視点で日常の風景や身近なオブジェクトをモチーフにした作品などを制作するアーティストの山口幸士さん。これまで辿ってきた道筋やスケートボードとのつながり、日常についての考え方などについてお聞きします。
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oil on linen
2022年4月に行った川崎の某工場での個展の展示風景
untitled. oil on linen
2022年4月に行った川崎の某工場での
個展の展示風景
キュレーター高須咲恵さんが、毎回1人の国内外の注目アーティストをピックアップし、そのアーティストへのインタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのはスケーターの視点で日常の風景や身近なオブジェクトをモチーフにした作品などを制作するアーティストの山口幸士さん。これまで辿ってきた道筋やスケートボードとのつながり、日常についての考え方などについてお聞きします。
展示場所:本館1F GRAND PATIO
展示期間:2022年12月1日〜2023年2月28日
中学時代に、地元の川崎の街を気持ち良さそうに滑っているスケーターがすごくかっこいいなと思い、スケートボードを始めたんです。そこからスケートボードのグラフィックや街の壁に描かれているグラフィティに興味を持ち、徐々にアーティストになりたいという気持ちが大きくなりました。
スケートボード自体、独特のスピード感がありますし、スケーターには街中にある階段や手すりを遊び場として見る目線があります。スケートボードを軸にものを見るということがスケーターらしいなと思いますし、街だけでなく他のことも視点を変えると新鮮に見えてくる。それが面白くて、スケーターの視点をさまざまな形で作品に取り入れていきました。
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ink and collage(found paper) and coffee on paper
NYでは怪我をしてスケートボードに乗れなくなってしまったので、そこから日常の何でもない風景画を描き始めました。だから、作風というか、描く内容がちょっと変わりましたね。ただ、スケボーに乗っている時に見ていた、流れるような風景をずっと描いていますし、今でも「ここは路面がいいな」とか、そういう目線で街を見ています。あと、僕は地元があまり好きではなかったのですが、帰国後は地元を俯瞰できるようになり、川崎にも実はいろんな人がいて、いろんな生活や歴史があることに気づき、魅力を感じるようになりました。2022年の4月には、川崎の工場を借りて個展を開きましたが、ギャラリーではない場所での展示はとても新鮮でしたし、もうちょっと自分のいる場所を掘り下げていきたいです。
2022年4月に行った川崎の某工場での個展の展示風景
日常って何も起きないんですけど、世界はそういうもので成り立っている。大きなことは日常にないけれど、立ち止まって見てみると、そこには風が吹いて葉っぱが揺れていたり、小さな変化が常にあったりするんですよね。そういうところにいかに気づけるか、という思いがあるんです。スケーターにしかわからないスケートボードのスポットと違って、誰しもに日常があるし、そのなかには意識しないと見落としてしまうものがある。だから、自分はあえて見落としてしまいそうな風景画を描いています。風景画でも視点を流れるように変えることで、スケーターらしさが出るんじゃないかとも思っていて。言葉にすると難しいですが、自分が見ている風景を通して、「何もないこと」を描きたいんです。
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oil on linen
コロナが始まる前から日常の風景は描いていましたが、「何もないこと」をより感じたというか。外出しづらい状況でしたが、窓を開けるとカーテンが揺れていて身近にも世界は広がっているということに気づきました。今まで当たり前だと思っていたことって当たり前ではないんだと一層感じましたね。
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oil on linen
二子玉川周辺を散歩してモチーフを決めたペインティングと、GRAND PATIOにはモニターがあるので初めて映像にチャレンジしようと思っています。映像と言っても、何も起きない作品を撮りたくて。ぱっと見は何も起きないけど、よく見たら虫が飛んでいたり、時間とともに日の入り方が変わってきたり……そういう映像を作る予定です。GRAND PATIOは、本を読んでいる人もいれば、買い物待ちのお父さんや高校生のカップルが自由に過ごしていたり、小さい子が展示している作品を眺めていたり、ギャラリーともまた違う空間で面白いですよね。見落としてしまいそうな風景画や何も起きない映像を展示するので、それをみなさんがどう見てくださるかとても楽しみです。
制作中の映像から一部抜粋
街を遊び場とするスケートボードの柔軟な視点に強く影響を受け、日常の風景や身近にあるオブジェクトをモチーフにペインティング、ドローイング、コラージュなどさまざまな手法を用いて独特な視点に転換する。
2015年から3年間、ニューヨークでの活動を経て現在は東京を中心に活動している。
2022年4月には川崎の某工場にて個展を開催するなど活動を展開している。
アーティスト、キュレーター。2011年東京藝術大学大学院美術教育研究室修了。街の中でおこなわれる表現「ストリートカルチャー」に関するリサーチや、展覧会の開催、作品制作をおこなう。主な展覧会に、2017年石巻市「Reborn-Art Festival」アシスタントキュレーターとして参加、2018年市原湖畔美術館「そとのあそび展」共同キュレーションなど。