日本橋高島屋にまつわる面白いモノやコトを発信するWEBマガジン「デパートロジー」
2023年の1・3・5月号は、開店90年を記念したスペシャルバージョンでおとどけします!
更新日:2023/5/9
守るべき伝統は継承しながら、時代ごとにお客様の求める変化に応えてきた高島屋。伝統工芸の世界にもまた、卓越した技を守りつつ、時代に応じたアップデートを続ける人たちがいます。日本橋高島屋開店90年のスペシャルバージョンを締めくくる今回は、全国の伝統工芸の職人を集めた高島屋の名物催事「~この道ひとすじ~日本の伝統展」の開催に際して、ゆかりの深い職人の方々に、未来への挑戦についてうかがいました。
「篠崎硝子工芸所」は、江戸切子の伝統工芸士、篠崎英明さんの工房。現在は息子の翔太さんも跡継ぎとして働いています。「篠崎硝子工芸所」の商品はほぼ高島屋専売で、「日本の伝統展」にも30年以上出展と、高島屋とつながりの深い工房です。そこで今回、昨年高島屋に入社した村上夏美さんが、「日本の伝統展」に長く携わる玉井邦治さんとともに「篠崎硝子工芸所」を訪問し、お話をうかがいました。
▲左から、「篠崎硝子工芸所」2代目篠崎英明さん、3代目翔太さん、
高島屋日本橋店販売部第3部 村上夏美さん、同課長 玉井邦治さん。
村上さん 英明さんはいつこの世界に入られたのですか?
英明さん うちの工房は父の清一が1957年に立ち上げ、私が入ったのは1981年。仕事が面白くなったのは国家資格の伝統工芸士に認定された40代の頃からですね。
村上さん 高島屋とのお取り引きはいつからでしょうか。
英明さん 1990年頃、日本橋高島屋が[カガミクリスタル]に特注した作品を父が制作したご縁で展示が決まり、お取り引きが始まりました。高島屋のお客様に鍛えていただいて、商品の幅もクオリティーも向上しました。
村上さん 作品づくりで大切にしておられることは?
英明さん 江戸切子の技術でうちらしさを出すこと。水色の作品は父の作品ですが、直線が全くなく、模様が無数に映り込むのが特徴。私の作品はカットの緻密さが持ち味。[カガミクリスタル]の上質なガラスが使えるのも特徴です。
玉井さん 技術力とクオリティーがゆるぎないですね。
▲初代の篠崎清一さんの作品。無数の花模様が映り込む。
▲篠崎英明さんの「天開オールド 玉小紋」。
▲こちらも英明さんの定番「タンブラー 連星」。
英明さんの作品は「日本の伝統展」にも出品予定。
英明さん 常設の特選和食器売場は検品が厳しいので。若い職人が徹底的に磨いて検品し、去年は納品の300個全部を「完璧です」と言っていただけました。
玉井さん 目利きのお客様が多いので、求められるレベルにお応えすることで、高島屋の担当者も職人さんも育てられます。
▲初代の篠崎清一さんの作品。無数の花模様が映り込む。
▲篠崎英明さんの「天開オールド 玉小紋」。
▲こちらも英明さんの定番「タンブラー 連星」。
英明さんの作品は「日本の伝統展」にも出品予定。
村上さん 翔太さんが入られたのはいつですか?
翔太さん 10年前、大学卒業後です。普段は社長(英明さん)がデザインした定番商品を正確に作り、技術を磨いています。
英明さん 今の江戸切子業界は彼と同世代の職人が多く、切磋琢磨していますよ。
翔太さん 社長や先輩、仲間にも恥ずかしくないものを作らねばと、常々意識しています。
玉井さん 「日本の伝統展」に出展している若い職人さん同士でも交流していましたね。
翔太さん 秀衡塗の職人さんとコラボでグラスを作りました。
英明さん 最近はどの工芸も海外の需要が増えていますが、江戸切子は誰が見てもわかるほど個性を表現しやすいのも特徴かもしれません。
翔太さん 今は指名買いも多く、個性が光る職人が注目を集めています。僕も技術を磨きつつ、独自性を表現できるようになれたら。
▲模様を彫る翔太さん。
▲村上さんは工房訪問がほぼ初めてで新鮮な様子。
玉井さん 江戸切子は作品コンテスト「江戸切子新作展」が毎年あるおかげで、商品だけではなく作品を作る機会があるのがいいですね。
翔太さん 毎年挑戦していますが、4年前、新作展の作品をwebで見てわざわざ買いに来てくださった方がいたのは嬉しかったです。今年は入賞が叶わずでしたが…。
英明さん そういう経験と技術の鍛錬を重ねて個性は固まっていくもの。作品は年一回の制作だけど、商品は毎日作るもの。それがいいものかどうかで、生き方も変わっていくと思うよ。
翔太さん そうですね。突然新しいことができるようになるわけではないと思うので、技を一つ一つ磨くことを積み重ねて、作品作りに結晶させていきたいです。
▲今年の新作展に出品した翔太さんの作品。
2色の吹きガラスのボウルにペイズリー柄を江戸切子風に表現。
▲翔太さんが東北の漆芸、秀衡塗の職人青柳匠郎さんとコラボした、オールド・ファッション・グラス。
1915年創業の「篠原風鈴本舗」。江戸時代と変わらぬ製法で、東京で作られる「江戸風鈴」の工房です。CMなどにも頻繁に使われる伝統的な柄はもちろん、高層ビル群など現代的な絵柄や、アニメやブランドとのコラボ柄など新商品を続々と発売。伝統を継承しながら新しさを発信する篠原由香利さん、久奈さんの姉妹にお話をうかがいました。
▲左から、「篠原風鈴本舗」篠原由香利さん、妹の久奈さん。二人とも大学卒業後家業に入りました。
2代目の篠原儀治さん、3代目の裕さん亡き今、母の惠美さんと家業を守ります。
▲左から、中丸 市松、虎子石、江戸切子風鈴・藤。江戸切子は山田硝子加工所の山田真照さんが加工。
村上さん 「江戸風鈴」の特徴を教えてください。
由香利さん まず型を使わず宙吹きのガラスであること。また鳴り口をあえてギザギザに仕上げていること。耳に優しい音になります。そして絵を風鈴の内側から描いていること。屋外に提げても絵柄が傷みにくいのです。この3つが、江戸時代から守り続けている特徴です。
村上さん 年間どのくらい生産されているのですか?
久奈さん 最盛期は8万個でしたが、今は約3万個くらい。
由香利さん いちばん多いのは5月前後〜夏です。
久奈さん 家族みんな寝られない時期があるよね。
玉井さん 忙しい中、体験教室もよくなさってますね。
由香利さん アイデアマンの祖父が始めたんです。小学校の体験教室をすると、おうちでも話してもらえて多くの方に知っていただけるので。
▲ガラスを吹く公孝さんは由香利さんの夫。
ガラス吹きは男性が担当。
宙吹きガラスは一つ一つ大きさ・厚みが異なり音も変わります。
村上さん 新柄はどんなものが多いのですか?
久奈さん 毎年干支の柄は作りますし、アマビエ様のように世相を反映したものも作ります。
由香利さん 風鈴は一つから作れるのでチャレンジもしやすいんです。新柄の考案は楽しい作業でもありますが、考えられず苦しいときも。
久奈さん ペットの柄など個人の方のオーダーも受けていて、喜んでいただけるとこちらも嬉しいですね。
由香利さん 40年ほど前から「日本の伝統展」など百貨店催事に出るようになり、柄も凝ったものに。値段は多少高くてもよさをわかってくださるお客様が多いので。
久奈さん 「伝統展」といえば祖父です。本人も話すのが好きだったので、晩年も遊びに来ていました。
玉井さん 本当にファンの多い職人さんでしたね。
由香利さん 「伝統展」はほかの催事よりもお客様とのコミュニケーションが多いのが楽しいんです。
▲上:絵付け場では姉妹とお母様が並んで作業されることが多いのだとか。右:油で溶いた顔料で絵付け。喜怒哀楽が入らないよう無心で描くようにしているそう。
村上さん 今後について考えておられることは?
由香利さん 祖父や父はいつも「伝統を守るのは我々じゃなくてお客さんだよ」と言っていましたが、使う人がいないと続かないもの。風鈴は生活必需品ではないので、お客様が生活に取り入れたくなるものを作りたいです。部屋に飾れるスタンドも作っているので、夏に限らず自由に楽しんでいただけたら。
久奈さん 改めて考えると「よくここまで続いたな」と私たち自身も思います。だからこそ私たちも続けていきたいんです。
由香利さん コロナ禍で大変だったとき、風鈴作りが好きなんだと思い知って。だから後悔のないよう、当たりそうな仕掛けはどんどんやりたい。守りに入っちゃだめだ、攻めていこう!と思っています。
「篠原風鈴本舗」による
《風鈴の絵付けワークショップ》開催
受付は終了いたしました。
〝いまに生きる
伝統工芸技術〟を紹介し続けて
全国各地の素材と技を継承する職人に集まっていただき、間近で伝統的職人芸に出合える催しとして人気の「日本の伝統展」。始まりは1972年に大阪店で開催し好評を得た「日本のナンバーワン展」でした。同年に現名称に変更し、日本橋店でも開催。以来50年余、高島屋は日本の伝統工芸技術を時代に即して掘り起こす一助となってきました。
▲第15回日本の伝統展ポスター
このポスターは1994(平成6)年に日本橋店開催のもの。江戸時代からの製法を継承し進化させている職人のお二人をご紹介。右が江戸切子の篠崎硝子工芸所、当時の当主・篠崎清一さん、左が江戸風鈴の篠原風鈴本舗の篠原儀治さんです。(画像提供:高島屋史料館)
▲第15回で活躍されていたお二人は共に、今回ご紹介しているそれぞれの工房の若手職人の二代前のお爺様。
第42回〜この道ひとすじ〜
日本の伝統展
今年も、日本各地から伝統の技を受け継ぐ職人が集結。日々、鍛錬を続けている職人技の実演を交えながら、それぞれの商品を販売します。本文でご紹介した篠崎翔太さんや篠原さんご姉妹、次世代の職人さんをはじめ、熟練の職人さんも来店。30余の職人芸が一堂に会するこの機会に、ぜひ、会場で技と人にふれてください。
開店当時の日本橋高島屋を
レゴ®ブロックで再現!
■開催中→6月6日(火)
■本館1階 正面ステージ横
日本で唯一のレゴ®ブロック認定プロビルダー三井淳平氏が約4万ピースのレゴ®ブロックで制作した、1933年(昭和8年)開店当時の日本橋高島屋(1/72スケール)を展示中。三井氏に、制作時のこだわりなどをうかがいました。
日本橋高島屋は以前からよく訪れていた身近な場所。格調高い伝統的な建築物が好きなので、今回レゴ®ブロックで再現することができて嬉しかったです。参考資料は、開店当時の白黒写真や模型、図面など。方眼紙に鉛筆で、建物全体の柱や窓の数、比率などを簡単にスケッチしてから制作しました。建物の前を路面電車が走っていますが、これも実際にあった車両を調べて再現しています。難しかったのは建物の重厚さや複雑さを表現しながらも、レゴ®ブロックの特性を生かして、ある程度デフォルメしていくところ。中央の「高」の文字や曲線の再現にも苦労しました。屋上の緑のバランスなど、最後まで調整に調整を重ねて、完成までにかかった時間は約2カ月半。細部までこだわって作り上げました。ぜひ遠くや近くから、上、下からといろいろな角度でじっくり見ていただきたいですね。
三井淳平氏
1987年生まれ。東京大学在学中、「東大レゴ®部」を創部。 2010年、レゴ®ブロックを素材とした作品制作や課外活動における社会貢献が認められ、「東京大学総長賞」を個人受賞。2011年、レゴ®認定プロビルダーに最年少で選出される。2023年、現代アートとしてボストン美術館で作品が展示される。
今、盆栽や抹茶など、昔から日本人が愛してきたモノたちが新しい視点を取り入れ、モダンに進化しています。今回は、現代の暮らしにすっと馴染むデザイン、ほっこり和む可愛いアイテムをご紹介。この夏、「和モダン」を楽しんでみませんか。
こちらの商品いずれかをお買上げいただくと、先着で「おすすめスイーツ」をプレゼント!
詳しくはCONTENTS.3にある「sweets♥eats」をご覧ください。
餡を香ばしい最中種(皮)で挟んだ「最中」。日本に古くから伝わる和菓子で、起源については諸説ありますが、江戸時代後期に生まれたといわれます。一口に最中といっても、その形や味わいはさまざま。長い歴史の中で形を変えず、伝統を守り続けるものもあれば、新たなアイデアを取り入れて進化したユニークな最中も。日本橋高島屋で人気の、個性豊かな最中をご紹介します。
読者お買上げプレゼント
5月9日(火)→6月8日(木)の期間中、「DEPARTOLOGY(デパートロジー)」のWEBページをご提示のうえ、CONTENTS.2でご紹介した商品(同じブランドなら掲載商品以外と合算可)を税込5,000円以上お買上げのお客様、先着100名様に『sweets♥eats』でご紹介したブランドのスイーツ(1種類)と引き換えができるチケットをさしあげます。 ※お買上げ1回につき1枚プレゼント引換券をさしあげます。※プレゼントは1組様につき1点限りとさせていただきます。※期間を過ぎた場合はご利用いただけません。※引換券1枚につき〈叶 匠壽庵〉水羊羹、栗山家(各1個)、〈たねや〉ふくみ天平(3個入)、〈とらや〉最中(2個、袋入)と交換できます。※準備数は数に限りがございます。予定数に達した際はご容赦ください。