19世紀末から20世紀のはじめにかけて登場してきた「百貨店」は、「商品」への新しい視点をつくり出しました。多くの商品をながめ渡す、パノラマ的な視点。建築も中央に大きな吹き抜けをつくり、見渡しのよい空間を構築。自由で楽しいウインドーショッピングも生み出しました。商品は販売されるだけのものから情報としての役割へ。それらは時代を映し出す鏡、生活スタイルの提案になりました。また日本の百貨店は、明治以来、美術や工芸、さまざまなデザインのミュージアムとしても機能してきました。本展では、そんな文化のパノラマ装置としての百貨店をご紹介しました。
国内屈指のデザイン評論家であり、大学でも教鞭をとってこられたデザイン研究者である柏木博氏。近現代のデザインを文化史としての側面からとらえる研究のなかから、百貨店の果たした役割を紐解きます。ヨーロッパ都市に登場した時代から、日本に定着し今日に至るまで歴史をつづりながら、百貨店はパノラミックに世界を見る「視覚文化」の重要な装置だったことが解き明かされてゆきます。
<セミナーのポイント>
上段左[撮影:柏木博]/上段右・下段右[所蔵:高島屋史料館]
大学で日本のファッション史を研究し教鞭をとる傍ら、仲間とセレクトした服やアクセサリーと本を揃えたショップを運営する井上雅人氏。日本ではもともとあった和服文化の上に、近代に入って輸入された洋服文化が定着してゆきますが、そうしてできた複雑なファッションの歴史を語っていただきます。その背景には、流行の最先端として発信を続けてきた百貨店の存在がありました。膨大な資料と共に、その変遷を辿ります。
<セミナーのポイント>
左[所蔵:高島屋史料館]/中下[出典:『モードェモード No.107、1967-68 年秋冬パリコレクション特集号』モードェモード社、1967 年]/右[提供:井上雅人]
明治末の日本に誕生して以来、消費文化の中心となってきた百貨店。大正・昭和初期にかけての生成過程において、多くの商品・広告デザインが生み出され、日本の消費社会は成熟してゆきます。なかでも百貨店を舞台に急速に発展したのが子ども向け商品。長年、近代のデザイン・文化史を研究してきた神野由紀氏が、その舞台裏を解説します。
<セミナーのポイント>
上段右[所蔵:田中本家博物館]/下段左[所蔵:土井子供くらし館]/
下段中[所蔵:高島屋史料館]/下段右[所蔵:高島屋史料館]
日本を代表する住宅建築家・中村好文氏がめざすのは、常に人に寄り添う建築。その魅力はたくさんの人を惹きつけて、人気を呼んできました。特に住宅は、暮らしを支える大切なデザイン。仕立屋が、一人一人の身体に合わせて洋服を仕立てるように、その人の暮らしに合わせたデザインを心がける中村氏の珠玉の住まいが紹介されます。
<セミナーのポイント>
上段右・下段[提供:中村好文]