柳宗悦はなぜ沖縄を「宝の山」と呼んだのか?展覧会「琉球の民藝」の見どころを催担当者が解説
この夏、日本橋店と大阪店で開催する展覧会「琉球の民藝」。民藝好きはもちろん、旅や文化、丁寧な暮らしに関心がある方にもおすすめしたい展覧会です。
民藝運動の父・柳宗悦が「宝の山」と称した「沖縄民藝文化の世界」にぜひ会場で触れていただきたく、見どころを催担当者目線でご紹介します。
宣伝部催担当 N
展覧会や商品催を企画する催担当となって4年目。入社して初めて配属されたのは婦人雑貨売場、現在は民藝のある暮らしにあこがれる「民藝初心者」。いま欲しいのは小鹿田焼の8寸皿。
見どころ①
柳宗悦を魅了した、沖縄の文化
「民藝」という言葉を聞くと、どんな風景を思い浮かべるでしょうか。
素朴な焼きもの。手織りの布。名もなき職人がつくった日用品。そして、それらが当たり前のように人々の暮らしの中で使われている情景。
今から100年前、柳宗悦はそうした「生活の中に宿る美」を見出しました。豪華な美術品でも、著名な作家の作品でもない。毎日の暮らしを支える手仕事の中にこそ、人の心を打つ美しさがある──それが「民藝」の思想です。
そんな柳が、生涯にわたって魅了され続けた土地が、沖縄でした。

柳宗悦が沖縄に深く関心を寄せるきっかけとなったのは、学習院高等科時代の同級生であり、琉球王国の王家・尚家21代当主の尚昌侯との交流でした。
1938年以降、柳は4度にわたり沖縄を訪れます。そこで出会ったのは、本土とはまったく異なる色彩と造形の世界。
鮮やかな紅型(びんがた)の衣裳。南国の光を映したような織物。大胆で力強い壺屋焼。
そして、暮らしと芸能が自然につながる独特の文化。
柳はその豊かさを「宝の山」と表現しました。
戦前の沖縄は、多くの伝統がまだ日常の中に息づいていました。柳はそこに、近代化の波の中で失われつつあった「生活と美が一体となった世界」を見たのかもしれません。
見どころ②
今だからこそ出会いたい展覧会
民藝100年、今こそ「民藝」
2026年は、「民藝」の理念が確立して100年という節目の年です。また、2019年の火災で焼失した首里城正殿の再建が予定されている年でもあります。
柳らによる工芸調査と蒐集が行われた後、沖縄は戦禍に見舞われ、多くの工芸品や歴史、文化が失われました。今回の展覧会では、柳たちが残した貴重な記録や収集品の展示を通して、沖縄文化や当時の人々の暮らしを今に伝えます。
大量生産が当たり前となった今だからこそ、人の手が生み出すものの価値とは何か。
日常を少し豊かにする道具とはどんなものか。
そして私たちは、どんな美しさとともに暮らしたいのか。
そんな問いかけにきっと応えてくれる展覧会です。
見どころ③
鮮やかな色彩感覚 「沖縄紅型」
本展展示の大きな見どころの一つが「琉球の染物」です。
沖縄紅型の魅力を、紅型衣裳と型紙、柳自身の言葉とともに紹介し、彼が沖縄に惹かれた原点を紹介します。
「紅型」の魅力は、何といってもその色彩。
深い藍。鮮烈な赤。生命力を感じさせる黄色や緑。松竹梅や菊、牡丹、鶴亀といった吉祥文様が、南国ならではの自由な感覚で表現されています。柳が心を奪われた理由が、実際の作品を見ることで実感できるのではないかと思います。

(123.3×121.0cm、19世紀)
見どころ④
「焼きもの」 の素朴で力強い美
民藝といえば、やはり焼きものを思い浮かべる人も多いかもしれません。
本展でも、壺屋焼を中心に、酒壺や抱瓶(だちびん)、鉢や皿など、沖縄の暮らしを支えた器を紹介します。
これらは本来、鑑賞するために作られたものではありません。
水を運び、酒を蓄え、食卓で使うためのものです。
しかし、長く人々に使われてきた道具には、不思議な存在感があります。
柳が提唱した「用の美」とは、まさにこうした世界でした。
使うために生まれたものが、結果として美しい。民藝の本質に触れられる展示です。
陶工達が培った素朴で力強い造形と、地域風土が育んだ独自の土の美にぜひ注目してみてください。
(11.0×11.0cm、19世紀)
(18.2×8.4cm、19世紀)
見どころ⑤
暮らしと芸能がつながる琉球文化
「琉球の風物」では、踊り衣裳や芝居幕、籠や枕箱、張り子人形などが並びます。
ここから見えてくるのは、暮らしと芸能が切り離されていなかった沖縄の文化。
祭りや踊り、歌や芝居が日常生活と自然につながり、その中で多くの手仕事が育まれてきました。現代では失われつつある「生活文化の総合芸術」とも言える世界観に出会えるでしょう。
(175.0×200.0cm、19世紀)
見どころ⑥
芹沢銈介や浜田庄司も沖縄に魅了
展示の終盤では、民藝運動を代表する作家たち(染色家の芹沢銈介、陶芸家の河井寬次郎、濱田庄司)が沖縄から学び生み出した作品も紹介されます。
日本近代工芸を代表する彼らが、沖縄の文化にどのような刺激を受けたのか。その交流の足跡をたどれるのも本展ならではの魅力です。
(丈160.0cm、1960年頃)
(25.8×19.0cm、1941年)
(23.4×24.0×13.0cm、1940年頃)
本展で紹介される沖縄の手仕事についてもっと知りたい方は、民藝担当バイヤーが現地取材をもとに紹介する「沖縄民藝の魅力」記事もぜひご覧ください。やちむんや紅型、琉球ガラスなど、沖縄民藝の背景や作り手の思いを詳しく紹介しています。
民藝沼にハマるバイヤーが語る!何度も沖縄に通って見つけた沖縄民藝の魅力 >>
「柳宗悦が出会った沖縄の美
琉球の民藝」日本橋・大阪で開催
柳宗悦が見つめた「沖縄の美」とは何だったのか。今なお輝きを失わない琉球の手仕事と文化の豊かさを、この機会にぜひご体感ください。
会場では、日本民藝館が所蔵する琉球民藝コレクションを中心に約100点を展示し、文化映画「琉球の民藝」を上映。戦前の沖縄の風景や生活の姿、暮らし・芸能が息づく風土を視覚的にご覧いただけます。
染織、焼きもの、暮らしの道具や芸能文化を通して、柳宗悦が沖縄で見出したその美しさを、今あらためてたどる展覧会です。
「柳宗悦が出会った沖縄の美 琉球の民藝」
【東京会場】日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール:
2026年8月26日(水)~9月6日(日)
【大阪会場】大阪高島屋 7階グランドホール:
2026年9月9日(水)~9月21日(月・祝)
入場料:一般1,200円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
タカシマヤアプリ会員さま向けのご優待割引もございます。詳細は展覧会特設サイトをご確認ください。
全国各地の手仕事が集まる「民藝展」も同時開催。
用の美の魅力に触れながら、「民藝」の世界をより深く楽しむことができます。
※内容は2026年8月17日現在のものです。
※会期・内容等が変更・中止となる場合がございます。
※商品写真も含め、写真はすべてイメージです。

