民藝沼にハマるバイヤーが語る、作り手と使い手を繋ぐ「配り手」――歴史ある名店の魅力
「民藝」という言葉が生まれてから100年。
高島屋は民藝運動の初期から、その魅力を長年にわたり紹介してきました。
100年にわたり民藝と関わってきた高島屋の、民藝をこよなく愛する担当バイヤーが、“民藝にまつわるさまざまな魅力”を連載でお届けします。第3回となる今回は、全国各地の郷土が育む暮らしに宿る美を広める存在、民藝の「配り手」について紹介します。本年、日本橋店と大阪店で開催する『民藝展』にも出店予定です。
民藝の魅力を広める
「配り手」とは
民藝の世界では、品物を作る人を「作り手」、実際に品物を使う人を「使い手」と呼びます。そして「作り手」と「使い手」を繋げる(=民藝を広くひろめる)役割をがある「配り手」がいます。
「配り手」は、民藝の普及活動の手法のひとつとして、1939年の『月刊民藝』(画像)にもすでに紹介がされていました。
<民藝を広く認知させる3つの手法>
・美術館としての役割をもつ、「民藝館」
・雑誌の出版などを通して民藝の振興の役割をもつ、「民藝協会」
・民藝の品々をひろめる 販売・流通の役割をもつ、「配り手」(販売拠点)
今回は地域に根ざした、伝統あるふたつの「配り手」に迫ります。
現存する最古の「配り手」
[鳥取たくみ工芸店]
地域に根ざし、現存する最古の「配り手」が[鳥取たくみ工芸店]。医師でありながら民藝運動家でもある吉田璋也が1932年に地元鳥取で開店しました。
長谷裕太郎撮影、鳥取民藝美術館提供
鳥取生まれの吉田璋也は、学生時代に柳宗悦に出会い民藝運動に参画。1931年に鳥取に帰郷後は、地元の職人の手を借り、その土地に根ざした素材や技術を用いて、新作民藝運動として暮らしの道具を生み出していきます。デザイナーとしての顔も持ち、地元鳥取の牛ノ戸焼を代表する染分皿(※画像)は吉田璋也がデザインした今でも人気の品物です。
彼は、「職人の技術の熟練のためには、継続して仕事を与える仕組みが必要である」という想いのもと、販売拠点として[鳥取たくみ工芸店]をはじめ、市民教育 工人教育の場としての鳥取民藝美術館、実際に民藝の器を用いて郷土料理を楽しめるたくみ割烹店もオープンしていきました。
[鳥取たくみ工芸店]では現在も、鳥取県内の窯元の陶器を中心に、染織や和紙など、さまざまな素材の手仕事の品々を販売しています。
本年日本橋店と大阪店で開催する展示・即売「民藝展」で[鳥取たくみ工芸店]からご紹介する予定の、地域に根差した「作り手」を一部ご紹介します。
①延興寺窯(えんごうじがま)
材料が取れる土地に窯と生活拠点を構え、緑豊かな山のふもとで、地元の陶土 釉薬原料を活かし、主に登り窯を用いて作陶しています。自然で落ち着いた質感と色合いで料理も映える器です。
②おぐら屋
因幡地方の岩井温泉にて、約200年前に木地師の小椋佐兵衛が挽物を製作したのが始まり。伝統な挽物の技術で作りあげる表情豊かな玩具。 代々ほぼ変わらないデザインが受け継がれ丁寧な手仕事で完成する愛らしい干支人形たち。「辰」や「未」が過去に年賀郵便切手にも選ばれています。
地域に根差す「配り手」
[くらしのギャラリー(岡山県民藝振興株式会社)]
次にご紹介したいのが、1947年に岡山県民藝振興株式会社として発足した[くらしのギャラリー]。
この設立には岡山県の大実業家 大原孫三郎が関わっています。彼は民藝運動に参画し、東京の日本民藝館設立も支援。1946年に息子の大原総一郎、染織家 外村吉之介、杉岡泰らにより岡山民藝協会が発足し、その1年後には日本で2番目、地方で最初の民藝館 『倉敷民芸館』が設立され、初代館長に外村吉之介が就任しました。
岡山県にはもとより陶器や和紙など、さまざまな素材を活かしたものづくりの歴史がありましたが、外村吉之介らの民藝運動により、倉敷本染手織研究所の設立や倉敷ガラスなど、新しく暮らしに美を吹き込む手仕事の品々が興りました。
そんな岡山の地で70余年続いてきた「配り手」だからこそ、[くらしのギャラリー(岡山県民藝振興株式会社)]は、民藝が育んできた美意識も大切にしながら、時代とともに生まれる新たな暮らしに根付く手仕事の品々も幅広く取り扱っています。
本年日本橋店と大阪店で開催する展示・即売「民藝展」に、[くらしのギャラリー]からご紹介予定の地域に根差した「作り手」をご紹介します。
①倉敷ガラス
外村吉之介が命名した「倉敷ガラス」。倉敷の地で生まれ、丈夫で長持ちする厚みや手のひらになじむやわらかな形が魅力。
②倉敷本染手織研究所
外村吉之介が倉敷民藝館付属工藝研究所として、1953年に設立。「健康でいばらない美しさをそなえた布を織る工人」を育成する学び舎です。現在も研修生を受け入れて、研修生たちは約1年かけて技術と民藝の精神を学びます。卒業後は、それぞれの暮らしの中で、糸を染め、布を織り、ものづくりを続けています。倉敷ノッティング(椅子敷)などで知られます。
ノッティングは、木綿の経糸に、マス目状のデザイン用紙通りに一目ずつウール(または綿)の束を結んで文様を出し、表面をカットして整えます。毛足が長く座り心地はしっかりしていますが、ふかふかです。
今回ご紹介した「配り手」も出店する『民藝展』を、3年ぶりに高島屋で開催!
展示・即売「民藝展」(協力:日本民藝協会)
展覧会会場に隣接する催事会場で、全国各地から用の美が集う「民藝展」を3年ぶりに開催します。
今年は民藝の理念にある地域性に立ち返り、各地の郷土・文化を受け継ぐものづくり、民藝のスピリットを持つ様々な作り手の品々をご紹介。さらに民藝について理解を深める、イベント(トークショー・ワークショップ)も開催予定です。
【日本橋店】
会期:8月26日(水)~9月7日(月)
※各日午前10時30分~午後7時30分
※最終日は午後6時閉場
会場:本館8階 催会場ほかに
●本館7階 ギャラリー暮らしの工芸・民藝のわ
8月26日(水)~9月8日(火)
※最終日は午後4時閉場。
●本館1階 正面イベントスペース
8月26日(水)~9月1日(火)
【大阪店】
会期:9月16日(水)~21日(月・祝)
※各日午前10時~午後7時
※最終日は午後6時閉場
会場:7階 催会場
展示・即売 「民藝展」について詳しくはこちら>>
※情報は随時更新されます。
【併催/展覧会】
「柳宗悦が出会った沖縄の美 琉球の民藝」

四方を海に囲まれた沖縄では、古くから中国や日本との交易を通じて独自の文化が育まれ、その風土に根ざした多様な工芸品が生み出されてきました。本展では沖縄の工芸品(染織 陶器 木工等)や、それらに触発された民藝運動の「作り手」たちの作品を展示。柳宗悦が出会った沖縄工藝の価値をあらためて捉え直します。
【日本橋店】
会期:2026年8月26日(水)〜9月6日(日)
会場:日本橋高島屋S.C. 本館8階 ホール
【ご入場時間】
午前10時30分~午後7時(午後7時30分閉場)
※最終日は午後5時30分まで(午後6時閉場)
【大阪店】
会期:2026年9月9日(水)~21日(月・祝)
会場:大阪高島屋 7階グランドホール
【ご入場時間】
午前10時~午後6時30分(午後7時閉場)
※最終日は午後4時30分まで(午後5時閉場)
主催:日本民藝館
後援:沖縄県
協力:日本民藝協会
企画協力:JR東海エージェンシー
「柳宗悦が出会った沖縄の美 琉球の民藝」について詳しくはこちら>>
◆Tバイヤー:
民藝の担当歴約13年。入社以来20年以上、リビング系ひとすじ。「民藝を語らせたら話が長い!」特に好きな素材は「漆」。漆器や陶器に囲まれた暮らしを好み、国内産地に足を運ぶのがライフワーク。
◆Kバイヤー:
民藝新任バイヤー。入社後、大阪店のリビングカテゴリーの売場に配属。なかでも、家具売場の担当が最も長く(8年間)、民藝については「日々、勉強中!」。特に好きな素材は「木」と「陶」。むかしから民藝に興味があり、民藝展のたびに商品を購入。現在も出張のたびに各地の民藝商品を衝動買いしてしまう。
※内容は2026年7月17日現在のものです。
※会期・内容等が変更・中止となる場合がございます。
※商品写真も含め、写真はすべてイメージです。

