Artist:
MIDORI
KAWANO

展示場所:
本館1F GRAND PATIO

展示期間:
2025年11月1日〜
2026年2月28日

コーディネーター高須咲恵さんが、毎回1人の国内外の注目アーティストをピックアップし、そのアーティストへのインタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのは、音楽と美術が共鳴する“現象”を起点に、グラフィック、プロダクト、空間演出、映像を横断的に手がける視覚ディレクター/グラフィックアーティストの河野未彩さん。現在の作風が生まれたきっかけやルーツ、インスピレーションの源などについてお聞きします。

SIMU-CIRCLE

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ART

SIMU-CIRCLE

Artist:
MIDORI
KAWANO

展示場所:本館1F GRAND PATIO
展示期間:2025年11月1日〜
2026年2月28日

コーディネーター高須咲恵さんが、毎回1人の国内外の注目アーティストをピックアップし、そのアーティストへのインタビューとともに作品を紹介する企画です。今回登場するのは、音楽と美術が共鳴する“現象”を起点に、グラフィック、プロダクト、空間演出、映像を横断的に手がける視覚ディレクター/グラフィックアーティストの河野未彩さん。現在の作風が生まれたきっかけやルーツ、インスピレーションの源などについてお聞きします。

―河野さんが創作活動を始めたきっかけや原体験を教えてください。

子どもの頃から図工やもの作り系のテレビ番組が好きで、中学時代から手を動かしていました。60年代の音楽やインド古典音楽の音色に惹かれたのですが、音楽をやろうとは思わず、音源のジャケットやアートワークに興味がありました。音など目に見えないものを可視化したいと思っていたんだと思います。他にも60~80年代のヒッピーカルチャーのグラフィックに触れたり、高校時代は横尾忠則さんのポスターアートを見たりして、走り出したくなるような衝撃を受けました。

―幼少期からアートの道を志していたのですか?

幼少期から宇宙や科学にとても興味があり、初めは宇宙飛行士になりたかったんです。でも、虫歯があると難しいと知って諦めました(笑)。私が小学生の頃はたびたび人間が宇宙に行ったというニュースがあって、向井千秋さんが日本人女性初の宇宙飛行士として宇宙に行ったのもその頃でした。私にとって、宇宙はすごく夢を見させてくれる、ワクワクする対象だったんです。

―宇宙や科学への興味はどのように創作活動につながっていますか?

音楽や美術に触れたときの言葉で説明できない気持ちの動きには、宇宙の構造との共通項があると感じていたんです。「なるほど」と腑に落ちる感覚や、創作のひらめきが生まれる瞬間には、何か共通点がある気がするんです。自分の中にある何かを探し当てるような感じというか、まだ見える状態になっていない感覚を掘り探し、引っ張ってくるような作業だなと感じています。また、人と人が影響し合うことや人が音楽や美術に惹かれることを「引力」にたとえるなど、いろんな物理現象を自分の体験に翻訳して解釈いくことにも面白さを覚えていました。

RGB_Material

RGB_Material

―つまり、物理現象をモチーフにするというより、ご自身の精神的な動きを作品にしているのですか?

そうですね。物理現象はモチーフにたまに使うことはありますが、常にそれを条件にして制作しているわけではありません。常に求めているのはインパクトですね。見たことないものを見てみたいという気持ちも強いです。

BRAINWATCH

BRAINWATCH

―自分にとって未知のものを自分の手で生み出すのは非常に難しそうですが、どのようにアイデアを掴んでいますか?

自分を驚かせるほどの新しいものを作ることは、やはりとてもしんどいです。アイデアを掴むのは、無意識という広大な海の中に海女さんのようにダイブして、深さの知れない暗い海底にある何かを獲りにいくようなイメージです。


特に、眠りに入る瞬間や目覚めた瞬間にアイデアをキャッチすることがよくあって。自分でも認識できていない潜在意識にあるものが創作の根底だと考えているのですが、睡眠の直前直後は顕在意識と潜在意識の境界線が曖昧になるので、そのときに何かをキャッチしています。

―これまで作ってきた作品の中で、特に自分を驚かせることができたものはなんですか?

女性をモデルに「風」をテーマにしたグラフィックが完成したときは印象的でした。この時は2週間くらい籠って、寝たり起きたりを繰り返してできた作品です。これが完成したときはすごく感動しましたし、自分の中に生まれた世界観に対して「やっと会えたね」という気持ちになりました。

―普段、どんなものからインスピレーションを受けますか?

素材の質感などからインスピレーションを得ることがあります。たとえば、普段見慣れている水でも、スマホの液晶の上に水滴が乗ると虹色のモアレが映る。光も、外を歩いていて思わぬところから反射が来るなど、物体が介在していないと起こらない現象を見ると興味深いなと感じます。

RGB_LightxHoney

RGB_LightxHoney

―光と影を用いた作品が多い河野さんにとって、光と影の魅力は?

視覚作品を作っているので、光と影は欠かせません。光があってこそ影が生まれ、影があることで、光の存在はより際立ちます。たくさんの現象を持ち、実際に体験できるというのも魅力です。こんなに私たちの視覚を支えているものなのに、現代物理学、特に量子力学の視点では、光は粒子(光子)でもあり波でもあるので、存在としては曖昧です。そういった境界線にあるものということが不思議ですし、それゆえにイマジネーションを掻き立てられることも魅力です。「物理現象と心の中の現象は近いからきっと翻訳できる」と思って心にしまった幼少期の衝動の鍵を、光が握っているんじゃないかとも思うんですよね。状態の変化として起こる物理現象と、心のエモーショナルな動き。その共鳴や翻訳を考えるとき、光はいつもその中心にある存在だと感じています。

[ 発光 × 干渉 × 鑑賞 ]者

[ 発光 × 干渉 × 鑑賞 ]者

―河野さんはアートディレクションのお仕事もされていますが、ご自身の作品と光の使い方に違いはありますか?

広告やアートワークなどの”ビジュアル”を作る際にも光のことを考えて絵作りをするのですが、この時はどちらかというとエモーションを強調させる演出効果の一つとして使っています。一方で、アート作品に落とし込むときは、光を現象や素材の一つとして扱っているイメージです。だから作品においては「光がつくる現象を見てください」と、フラットな物理現象としての光を主役にすることが多いです。

―近年はレンチキュラー(見る角度によって、絵柄が変化したり立体感が出たりする印刷物)を用いた作品を発表されていますが、レンチキュラーは作品においてどのような役割を果たしていますか?

レンチキュラー作品の軸に置いているメッセージは、「ものは角度によって見え方が変わる」ということ。同じ出来事でも、同じ物体でも、見る人の角度、その人の持っている経験値や状態によって捉え方が変わるということが、レンチキュラーだと表現しやすいです。

WORDS

WORDS

―GRAND PATIOではどのような作品を展示しますか?

レンチキュラーを用いた『WORDS』という作品をいくつか並べる予定です。『WORDS』は英単語の文字が一文字ずつ重なっている作品で、見る角度を変えると文字が次々と浮かび上ってくるというものです。たとえば「APPLE」と書いてあったとしたら、気になる人は動いて「APPLE」と書いてあることがわかるし、座って一点から見ている人には「A」しか見えません。動いて観察することで初めて全貌を読み取ることができます。

GRAND PATIOは人の往来がありながら、座ってリラックスしている方もいて、静と動が入り混じっている場所ですよね。『WORDS』は、そこでの過ごし方や見る人の状態によって見え方が変わる作品になっています。アートを見に来たわけじゃない方もたくさんいらっしゃると思うので、そういう方々の意識にどう作品の存在を介入させるかという点で、面白い場所だと感じています。

―最後に、作品を通して発信したいメッセージや今後の展望を教えてください。

レンチキュラーに「ものは角度によって見え方が変わる」という軸を置いているように作品ごとにはあるのですが、創作活動全体におけるメッセージは特に設けていません。というのも、これまでずっと具体的なメッセージについて考えてはいるのですが、考えれば考えるほど、言葉にできるメッセージよりも、”美しい”と思うものや、つくることの楽しさを注ぎきむことが何よりも、その時の鑑賞者にとって必要なメッセージを想起させてくれる装置になるのではという考えが強くなっていて。

今は、「どう作ると楽しいか」「どう精度を上げていくか」を考えています。作るものを研ぎ澄ませていって、元々あるメッセージをどこまでシンプルに強くしていけるか、ということに興味があるんです。もののもつ魅力を上げていくことが、今見ている目標です。

河野未彩

Artist

河野未彩
Midori Kawano


http://md-k.net/
視覚ディレクター/グラフィックアーティスト
音楽や美術に漂う宇宙観に強く惹かれ、2000年代半ばから創作活動を始める。
多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業の後、現象や女性像に着目した色彩快楽的な作品を多数手がけ、アートディレクション・グラフィックデザイン・映像・プロダクト・空間演出など多くの媒体で創作活動を続ける。
多色の影をつくる照明「RGB_Light」は、日米特許取得からパナソニック関連企業からの製品化までを実現。


高須咲恵

Art Curation

高須咲恵
SAKIE TAKASU


自身がアーティストやキュレータなど様々な立場で活動している背景から、企画から制作まで多様なプロセスをアーティストと共にし、「空間と人と作品の関係」を模索。リサーチベースのプロジェクトにも数多く参加し、特に都市における公共空間で複数の実験的なプロジェクトを展開。アートユニット「SIDE CORE」の一員として活動する他、宮城県石巻市で開催されてた「Reborn-Art Festival 2017」アシスタントキュレータとして参加、沖縄県大宜見村で開催されている「Yanbaru Art Festival」内では廃墟での会場構成を行うなど多くのプロジェクトに携わっている。

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