2025.10.28up

雨の日が待ち遠しい。
忠実な仕事が生み出す
“楽しさ”を携えて。
「前原光榮商店の洋傘」

「明日は雨です」と聞いて、少し嬉しくなる。そんな傘があったら、人生もちょっと得した気分になりませんか。東京・浅草で1948年に創業した〈前原光榮商店〉は、使う人の気持ちに寄り添う洋傘を、変わらぬ手仕事で作り続けてきました。

傘を持つ人だけでなく、
傘のある風景までも美しく見えるように

〈前原光榮商店〉の傘は、「生地を織る」「骨を組む」「手元を作る」「傘に仕立てる」という4つの工程を、職人たちが分担して仕上げています。なかでも「傘に仕立てる」工程は、フォルムや張り、開閉の音に至るまで仕上がりを左右する、もっとも繊細で重要なプロセスです。生地はズレを防ぐため2〜4枚ずつ裁断され、ミリ単位の精度で縫い合わされていきます。もちろん、内側の仕上げにも丁寧な手仕事を惜しみません。傘骨の先端「露先」から雨露がすっと落ちる姿を思い描きながら、生地をピンと張って形を整えて、傘を持つ人だけでなく、傘のある風景までも美しく見えるように  そんな願いが細部にまで込められています。

〈前原光榮商店〉三代目・前原慎史さん

高齢化に伴い、若手職人の養成に着手

長年、傘づくりを支えてきたのは、同じ地域に工場を構える熟練の職人たちでした。しかし高齢化が進み、5年前には社内で若手職人の養成に着手。100名以上の応募から、選ばれた5名の中には、ビニール傘しか使ったことがない人もいれば、〈前原光榮商店〉の洋傘を大切にしてきた人も。経歴もさまざまな人材が集まり、一から仕事を学び始めました。ベテラン職人たちが代わる代わる師匠役を担い、3年ほどで生地の裁断に使う木型の作成から仕上げまで、ひと通りの作業をこなせるようになっています。

若い職人が起こしてくれる新風に期待

創業から守り続けてきた丁寧なものづくりは、現在、「東京洋傘」として東京都の伝統工芸品に指定。展示会を通じて他店や職人たちと交流する機会も生まれ、若手にとっても大きな刺激となっています。
「若い方は、意識が高い。たとえば環境問題も、子どもの頃から触れてきているので、我々の世代より深い考えを持っている。今までの当たり前が、当たり前ではなくなっている時代。若い職人が、新風を起こしてくれることに期待している」と、三代目・前原慎史さんは語ります。

「傘は人を楽しくしなければいけない」

創業者である前原さんの祖父も父も、商売や傘のことはもちろん、自らの信念や哲学に至るまで、毛筆で書き記しては、工房のあちこちに掲げていた職人気質の人だったそうです。
なかでも印象的な言葉がふたつ  
「傘は人を楽しくしなければいけない」
「早く雨が降らないかなと、使える日を心待ちにしたくなる傘が理想」
この思いは今も、ものづくりの根底に息づいています。
「熟練した職人でも、一本の傘を仕上げるには手間と時間がかかります。でも、その分、長く大事に使っていただける傘になるんです。天気予報で『明日は雨です』と聞いたとき、がっかりする人が多いかもしれませんが、本当に気に入った一本があれば、それが朗報に聞こえる。“傘日和”になるんです。そんな風に楽しんでもらえたらうれしいですね」。若い力が加わって、ますます活気を帯びる〈前原光榮商店〉。世代を超えたものづくりへの挑戦は、これからも続いていきます。

〈前原光榮商店〉の洋傘は、下記の高島屋各店でお買い求めいただけます。
■日本橋、新宿、玉川「婦人用品」、横浜「シーズン雑貨」

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