北欧のテキスタイルと暮らし展
1.織の国、北欧
― 家族のためのクリエイション
北欧では古くからの手工芸である織物がインテリアとして発展してきました。テキスタイルの原点といえる、名もなき農家の女性たちが、家族のために、そして嫁ぐ自身のために織った、美しい手仕事の数々をご紹介します。
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テーブルクロス
作者不詳 1890頃
(c) Kentauros Yasunaga -

ベッドカバー
作者不詳 1904
(c) Kentauros Yasunaga
2.Beauty for All
― 美しさを価値へ
19世紀後半の工業化に対し、手仕事の価値と尊厳を守ろうと、1899年にリリィ・ジッケルマンがスウェーデン手工芸協会を設立。社会思想家のエレン・ケイは「美しいと感じるものと暮らすことが幸せをもたらす」と呼びかけました。
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エレン・ケイが暮らしたストランド荘
(c) 須長檀
3.デザインの黄金時代
― 織とプリント、それぞれのモダニズム
1920年代から確立されていったモダニズムの潮流で、伝統的な織物技術は芸術の域に。また1930〜40年代にはプリント技術が発展することで、自由で大胆なクリエイションが普及しました。テキスタイル・デザインの黄金時代とも言える作品をご覧いただきます。
3-1 アートへと昇華する織物
― 特別な空間を象徴する存在へ
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《スウェーデン》
バーブロ・ニルソン/ヴィオラ・グロステン/マリアンヌ・リヒター/イングリッド・デッサウ/ほか
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《フィンランド》
ドラ・ユング/マリエッタ・メッツァヴァーラ
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テーブルクロス《庭園のクロス》
バーブロ・ニルソン 1926
(c) Kentauros Yasunaga -

ラグ《貝殻》
バーブロ・ニルソン 1943〔MMF工房〕
(c) Kentauros Yasunaga
3-2 日常を彩るプリントデザイン
― テキスタイルがもたらす豊かな暮らし
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《スウェーデン》
ヨセフ・フランク/スヴェン・マルケリウス/ゴータ・トレガルド/ゴッケン・ヨブス/アストリッド・サンペ/ヴィオラ・グロステン/スティグ・リンドベリ/ハンス・クロンダール/ほか
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《フィンランド》
マイヤ・イソラ/マリエッタ・メッツァヴァーラ/ヴォッコ・エスコリン=ヌルメスニエミ
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プリント布《ハッセル》 ヴィオラ・グロステン
1959〔メンリッケ〕
(c) Kentauros Yasunaga -

プリント布《ウニッコ》 マイヤ・イソラ
1964〔マリメッコ〕
(c) Kentauros Yasunaga
4.さらなる自由へ
― 表現の場として広がる可能性
今やテキスタイルは、アーティストの内面や社会へのメッセージを表現する、純粋な「個人のクリエイション」のメディアとなりました。アートとして公共的な空間や部屋の中で、人々の心を満たすテキスタイルをご紹介します。
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《スウェーデン》
アニタ・グラフマン/アグネータ・フロック/エヴァ・ロデニウス
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《フィンランド》
ウフラ=ベアタ・シンベリ=アールストロム/リトヴァ・プオティラ/メリッサ・サマルヴァーラ/ほか
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タペストリー《ハンモックのデヴィッド》
アグネータ・フロック
1990
(c) Kentauros Yasunaga -

タペストリー《Joy》
メリッサ・サマルヴァーラ
2021
(c) Kentauros Yasunaga
エピローグ
未来へ紡がれるテキスタイルと暮らし
北欧の基礎学校(小中一貫校)には、伝統的手工芸について学ぶ「スロイド(Slöjd)」という授業があり、実際に大きな機織り機で織物づくりを行うこともあります。また、大人になってから手工芸学校に通い、学び直すこともできます。誰にでも開かれた、手仕事や自然素材に触れられるこうした経験が、北欧のテキスタイルを未来へとつないでいくのです。

(c) Kentauros Yasunaga
