CASA TATSUMURA KYOTO 1894 Takashimaya

スペシャルコラム 特集記事

ミラノが賛美した
美術織物の新境地

2026年4月、五代龍村平藏の姿はミラノにあった。世界最大規模のデザインの祭典「ミラノデザインウィーク」にて、「CASA TATSUMURA」の披露目を迎えたのだ。

「コモ湖を擁する地域だけに織物への造詣が深い。会場にいらした皆さんが、手織りで百年以上続くブランドが日本に存在するという事実と、柄のインパクトにとても驚いておられました」

そんな現地の反応に手応えを感じた人が、もう一人いる。「CASA TATSUMURA」のクリエイティブディレクター、エイタブリッシュの川村明子さんである。

和装の五代龍村平藏と、白シャツで正装した川村明子さん。ミラノの会場前にて。

川村さんは、普段きものを着ない。「だから正直、龍村の名前は知らなかった」と率直だ。プロジェクト始動の際も、会議室のテーブルに整然と並ぶ帯を前に、「美しい」とは思ったが、別段心は動かなかったという。

しかし、烏丸にある龍村の工場に踏み入った瞬間、風が吹いた。絶え間なく聞こえる織機の音。職人の佇まい。そこここに広がる帯には、まばゆい金銀の糸に包まれるように、鳥が羽ばたき、花が咲き誇っていた。そこで初めて川村さんの心に、130年間培われてきた龍村の魂が響いた。

「もう、帯にしておくのはもったいないっていうくらいの力を感じて。見せ方の違いで、こんなにも印象は変わる。これはとんでもなくワクワクするものになると確信しました」

そこから「CASA TATSUMURA」が生まれるまで、そう時間はかからなかった。これは帯ではない。織機という道具から生まれるアートだ。ゆえに柄の使い方や色合わせなど、呉服の世界の〝セオリーめいたもの〟もまったく意に介さず、思いのままにデザインした。「この美を、直球で伝えることが私のミッション」と川村さん。引き立て役には、端正な黒のフレームを配した。「やりすぎない。あくまでも主役は美術織物」と肝に銘じて。さまざまな仕事を通して本物に触れてきた川村さんの審美眼が、龍村をとらえたのである。

「川村さんの、呉服の業界に染まっていないフラットな視点が功を奏した」と五代。振り返れば二年前、襲名と同時に「和の躍動 和の解放」を自身のテーマに掲げ、以来さまざまなトライを続けてきた。今回の「CASA TATSUMURA」はまさに最たる体現。五代と川村さんが目指した高みを、私たちはこの秋享受する。

川村さんのアイデアで、赤い鳥居がミラノに出現。明快な和のメッセージに引き寄せられるように、多くの人が会場を訪れた。

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