すべての人がファッションを楽しむ社会を目指して。「Fashion for ALL your SENSES」プロジェクトの裏側【後編】
誰もがファッションを楽しむ社会の実現を目指しスタートしたプロジェクト「Fashion for ALL your SENSES」。前編では、プロジェクト発足の背景や2025年の商品開発について、担当バイヤーに話を聞きました。
「Fashion for ALL your SENSES」プロジェクトの裏側【前編】はこちら>> 後編となる今回は、2年目を迎えたFashion for ALL your SENSESの新たな挑戦について、竹村マーチャンダイザーとキュレーターとしてプロジェクトに参画いただいた石井健介氏に伺います。2026年は「オノマトペ」と「聴覚」を入り口に、新しいファッション提案に挑戦します。 石井健介氏
ブラインド・コミュニケーター。1979年生まれ、文化服装学院卒業。アパレルやインテリア業界を経てフリーランスの営業・PRとして活動。2016年4月、一夜にして失明。2021年より見える世界と見えない世界をつなぐ仲介者、ブラインド・コミュニケーターとしての活動をスタート。ワークショップや企業研修プログラムの開発、講演、企業と協業したインクルーシブデザイン製品の開発などに関わっている。 竹村マーチャンダイザー
入社から婦人服・リビング・こどもと多岐に渡る商品群を売場で担当し、直近4年はMD本部にてバイヤー業務を担当。ジャンルにとらわれない、新たな価値創出を目指し日々業務に取り組む。
―2年目のFashion for ALL your SENSESでは「オノマトペ」をテーマにされています。このアイデアはどこから生まれたのでしょうか。
竹村 昨年は視覚だけでなく、あらゆる感覚で洋服を伝えることに試行錯誤しながら挑戦しました。プロジェクト2年目を迎えるにあたって新たな要素を考えたとき、“オノマトペ”——「ふわふわ」「サラサラ」など、日本語特有の擬音語・擬態語に可能性を感じました。老若男女、子どもと話すときにもわかりやすい言葉で、共通のイメージを喚起できる。「見える」「見えない」の世界の境界を越えるとき、オノマトペが共通言語になり得るのではないかと考えました。
―石井さんは、オノマトペというアプローチを聞いたとき、どう感じましたか。
石井 面白いなと思いましたね。日本語ってオノマトペがものすごく多い言語で、その繊細な感覚を言語化する力をファッションに持ち込むこと自体が新鮮でした。「ふわふわ」と言っても、人によって感じ方は違う。共通言語でありつつ、感覚の違いも楽しめる。そこが面白いんじゃないかなと思います。 ―具体的にはどのようなオノマトペでカットソーを分類されているのですか。
竹村 今回は「ウキウキ」「キッチリ」「キラキラ」「ふんわり」「ひんやり」「サラサラ」の6つを提案しています。
たとえば「ウキウキ」は、立体的なモチーフや刺繍など、着たときを想像して楽しくなる仕掛けが詰まっています。「キッチリ」は、ピンタックやドレープで百貨店ならではの"きちんと感"を。「キラキラ」はラメや光沢素材で華やかさを、「ふんわり」は空気を含んだような柔らかな感触を、「ひんやり」は接触冷感素材で涼しさを、「サラサラ」は滑らかな肌触りを——という具合に、カットソー1着1着の感覚をオノマトペで表現しました。
―今回、カットソーをオノマトペで分類されていますが、どのように楽しんでほしいですか。
石井 今回6種類を代表的に提案していますが、僕らは正解を提示しているわけではないんです。お客様にとって「キッチリ」と書かれているカットソーが「いや、これはサラサラなんじゃないか」とか、自分なりの感覚に落とし込んで、想像して、新しい洋服の捉え方を楽しんでもらえたらいいなと思っています。 ―今回はアパレル企業5社が参加されていると伺いました。
竹村 [ダブルスタンダードクロージング][マッキントッシュ フィロソフィー][アンタイトル][コムサ][アダム エ ロペ][インディヴィ]といった、レディス・メンズを問わず幅広いブランドに賛同いただき、約50種類のカットソーを展開しています。視覚情報だけでは気付かなかった、服の魅力や個性に出会える。ファッションをあらゆる感覚で楽しむことを目指した取り組みです。
―ワークショップはどのような形で行われたのですか。
竹村 ブラインド・コミュニケーターの皆さんと高島屋のバイヤー、そして今回賛同いただいたお取引先様が参加して計6回開催しました。ワークショップでは、カットソーに触れ、感じたことをオノマトペで表現し合ったり、実際の売場環境を作ってロールプレイングをしたり、お互いの視点から活発に議論をしていきました。
―石井さん、ワークショップで特に印象的だったことは?
石井 今回は僕の他にもブラインド・コミュニケーターの友人たちにも声をかけています。彼らがたくさんのカットソーに触れて、テンションがものすごく上がっていたのが印象的でした。参加者全員が「Tシャツの概念が変わった」と言っていて、すごく楽しそうにしている。その瞬間に立ち会えたことが嬉しかったですし、バイヤーの方々やメーカーさんも「新たな気付きばかり」と驚いていて、その場にいた全員がワクワクしている感じがとても良かったですね。
―2026年は、ファッションにアートと音楽を掛け合わせた取り組みもされていますね。
竹村 Fashion for ALL your SENSESは「あらゆる感覚でファッションを楽しむ」がテーマです。視覚、触覚に加えて、聴覚でもファッションを楽しめないかと考えました。今回、アーティストが製作した作品を起点にシンガーソングライターが楽曲を制作しています。聴覚を入口に、ファッションを体感する新しい試みです。
―具体的にはどのような取り組みですか。
竹村 本プロジェクトに賛同するブランドのひとつ、[サロン アダム エ ロペ]が2名のアーティストを起用し商品を企画しました。アーティスト・Lee Izumida氏が手がけたアート作品を起点に、シンガーソングライターのRUNG HYANG氏が楽曲を制作。さらに、そのアートデザインをカットソーに落とし込んでいます。言葉だけでは表現しきれない抽象的なグラフィックやイメージを、「音楽」という表現手段で可視化・可聴化することで、デザインそのものと向き合う新しい体験を提案したいと考えました。 ―展開アイテムは2種類あると伺いました。
竹村 はい。ひとつは、キャンバスに描かれた線画のアート作品から生まれた、アコースティックサウンドの楽曲「Seeds of life」。
もうひとつは、和紙に描かれたアブストラクト作品をもとにしたR&Bサウンドの楽曲「Lull you」です。
それぞれのアートデザインをカットソーに落とし込み、フォトプリントや手刺しゅうで触覚でも楽しめるデザインに仕上げました。
―店頭ではどのように体験できるのですか。
竹村 店頭では指向性スピーカーを使った試聴環境を整え、アート作品の展示も行います。アートや音楽に没入する体験を通じ、それぞれのイメージを膨らませて、新たなファッション体験として感じてもらえたら嬉しいです。
―最後に、ポップアップに来られるお客様へメッセージをお願いします。
石井 「買いに行く」ではなく「参加する」という感覚で来ていただけたら嬉しいです。1枚のカットソーを通して、お客様同士、販売員の方との間にコミュニケーションがたくさん生まれたらいいなと思っています。その人だからこそ気づける商品の魅力がきっとある。その魅力を見つけるのに、ぜひ参加してほしいです。
竹村 ぜひ皆さんの目で、手で、いろんな感覚を使って商品に触れていただきたいですし、感じたことを教えていただきたい。ワークショップで見た皆さんの笑顔を、店頭のお客様と実現したいと思っています。 ―すべての人がファッションを楽しめる社会へ——Fashion for ALL your SENSESの挑戦はこれからも続きます。
「Fashion for ALL your SENSES」プロジェクトの裏側【前編】はこちら>> 後編となる今回は、2年目を迎えたFashion for ALL your SENSESの新たな挑戦について、竹村マーチャンダイザーとキュレーターとしてプロジェクトに参画いただいた石井健介氏に伺います。2026年は「オノマトペ」と「聴覚」を入り口に、新しいファッション提案に挑戦します。 石井健介氏
ブラインド・コミュニケーター。1979年生まれ、文化服装学院卒業。アパレルやインテリア業界を経てフリーランスの営業・PRとして活動。2016年4月、一夜にして失明。2021年より見える世界と見えない世界をつなぐ仲介者、ブラインド・コミュニケーターとしての活動をスタート。ワークショップや企業研修プログラムの開発、講演、企業と協業したインクルーシブデザイン製品の開発などに関わっている。 竹村マーチャンダイザー
入社から婦人服・リビング・こどもと多岐に渡る商品群を売場で担当し、直近4年はMD本部にてバイヤー業務を担当。ジャンルにとらわれない、新たな価値創出を目指し日々業務に取り組む。
取り組み①オノマトペでデザインを感じるカットソー
―2年目のFashion for ALL your SENSESでは「オノマトペ」をテーマにされています。このアイデアはどこから生まれたのでしょうか。
竹村 昨年は視覚だけでなく、あらゆる感覚で洋服を伝えることに試行錯誤しながら挑戦しました。プロジェクト2年目を迎えるにあたって新たな要素を考えたとき、“オノマトペ”——「ふわふわ」「サラサラ」など、日本語特有の擬音語・擬態語に可能性を感じました。老若男女、子どもと話すときにもわかりやすい言葉で、共通のイメージを喚起できる。「見える」「見えない」の世界の境界を越えるとき、オノマトペが共通言語になり得るのではないかと考えました。
―石井さんは、オノマトペというアプローチを聞いたとき、どう感じましたか。石井 面白いなと思いましたね。日本語ってオノマトペがものすごく多い言語で、その繊細な感覚を言語化する力をファッションに持ち込むこと自体が新鮮でした。「ふわふわ」と言っても、人によって感じ方は違う。共通言語でありつつ、感覚の違いも楽しめる。そこが面白いんじゃないかなと思います。 ―具体的にはどのようなオノマトペでカットソーを分類されているのですか。
竹村 今回は「ウキウキ」「キッチリ」「キラキラ」「ふんわり」「ひんやり」「サラサラ」の6つを提案しています。
たとえば「ウキウキ」は、立体的なモチーフや刺繍など、着たときを想像して楽しくなる仕掛けが詰まっています。「キッチリ」は、ピンタックやドレープで百貨店ならではの"きちんと感"を。「キラキラ」はラメや光沢素材で華やかさを、「ふんわり」は空気を含んだような柔らかな感触を、「ひんやり」は接触冷感素材で涼しさを、「サラサラ」は滑らかな肌触りを——という具合に、カットソー1着1着の感覚をオノマトペで表現しました。
―今回、カットソーをオノマトペで分類されていますが、どのように楽しんでほしいですか。
石井 今回6種類を代表的に提案していますが、僕らは正解を提示しているわけではないんです。お客様にとって「キッチリ」と書かれているカットソーが「いや、これはサラサラなんじゃないか」とか、自分なりの感覚に落とし込んで、想像して、新しい洋服の捉え方を楽しんでもらえたらいいなと思っています。 ―今回はアパレル企業5社が参加されていると伺いました。
竹村 [ダブルスタンダードクロージング][マッキントッシュ フィロソフィー][アンタイトル][コムサ][アダム エ ロペ][インディヴィ]といった、レディス・メンズを問わず幅広いブランドに賛同いただき、約50種類のカットソーを展開しています。視覚情報だけでは気付かなかった、服の魅力や個性に出会える。ファッションをあらゆる感覚で楽しむことを目指した取り組みです。
ワークショップで見えた、感覚の豊かさ
―ワークショップはどのような形で行われたのですか。
竹村 ブラインド・コミュニケーターの皆さんと高島屋のバイヤー、そして今回賛同いただいたお取引先様が参加して計6回開催しました。ワークショップでは、カットソーに触れ、感じたことをオノマトペで表現し合ったり、実際の売場環境を作ってロールプレイングをしたり、お互いの視点から活発に議論をしていきました。
―石井さん、ワークショップで特に印象的だったことは?
石井 今回は僕の他にもブラインド・コミュニケーターの友人たちにも声をかけています。彼らがたくさんのカットソーに触れて、テンションがものすごく上がっていたのが印象的でした。参加者全員が「Tシャツの概念が変わった」と言っていて、すごく楽しそうにしている。その瞬間に立ち会えたことが嬉しかったですし、バイヤーの方々やメーカーさんも「新たな気付きばかり」と驚いていて、その場にいた全員がワクワクしている感じがとても良かったですね。
取り組み②ファッション、アート、音楽——音楽(聴覚)で感じる新しい体験
―2026年は、ファッションにアートと音楽を掛け合わせた取り組みもされていますね。
竹村 Fashion for ALL your SENSESは「あらゆる感覚でファッションを楽しむ」がテーマです。視覚、触覚に加えて、聴覚でもファッションを楽しめないかと考えました。今回、アーティストが製作した作品を起点にシンガーソングライターが楽曲を制作しています。聴覚を入口に、ファッションを体感する新しい試みです。
―具体的にはどのような取り組みですか。
竹村 本プロジェクトに賛同するブランドのひとつ、[サロン アダム エ ロペ]が2名のアーティストを起用し商品を企画しました。アーティスト・Lee Izumida氏が手がけたアート作品を起点に、シンガーソングライターのRUNG HYANG氏が楽曲を制作。さらに、そのアートデザインをカットソーに落とし込んでいます。言葉だけでは表現しきれない抽象的なグラフィックやイメージを、「音楽」という表現手段で可視化・可聴化することで、デザインそのものと向き合う新しい体験を提案したいと考えました。 ―展開アイテムは2種類あると伺いました。
竹村 はい。ひとつは、キャンバスに描かれた線画のアート作品から生まれた、アコースティックサウンドの楽曲「Seeds of life」。
もうひとつは、和紙に描かれたアブストラクト作品をもとにしたR&Bサウンドの楽曲「Lull you」です。
それぞれのアートデザインをカットソーに落とし込み、フォトプリントや手刺しゅうで触覚でも楽しめるデザインに仕上げました。
―店頭ではどのように体験できるのですか。
竹村 店頭では指向性スピーカーを使った試聴環境を整え、アート作品の展示も行います。アートや音楽に没入する体験を通じ、それぞれのイメージを膨らませて、新たなファッション体験として感じてもらえたら嬉しいです。
買いに行くのではなく、「参加」しに来てほしい
―最後に、ポップアップに来られるお客様へメッセージをお願いします。
石井 「買いに行く」ではなく「参加する」という感覚で来ていただけたら嬉しいです。1枚のカットソーを通して、お客様同士、販売員の方との間にコミュニケーションがたくさん生まれたらいいなと思っています。その人だからこそ気づける商品の魅力がきっとある。その魅力を見つけるのに、ぜひ参加してほしいです。
竹村 ぜひ皆さんの目で、手で、いろんな感覚を使って商品に触れていただきたいですし、感じたことを教えていただきたい。ワークショップで見た皆さんの笑顔を、店頭のお客様と実現したいと思っています。 ―すべての人がファッションを楽しめる社会へ——Fashion for ALL your SENSESの挑戦はこれからも続きます。
【Fashion for ALL your SENSES POP UP SHOP開催】
■日本橋高島屋:4月29日(水・祝)~5月5日(火・祝)
本館1階 正面イベントスペース
■新宿高島屋:5月13日(水)~19日(火)
2階 ザ・メインスクエア
■大阪高島屋:5月27日(水)~6月2日(火)
1階 グッドショックプレイス 今回ご紹介したプロジェクトの様子は動画でもご覧いただけます。
Fashion for ALL your SENSESについて詳しくはこちら>>
■日本橋高島屋:4月29日(水・祝)~5月5日(火・祝)
本館1階 正面イベントスペース
■新宿高島屋:5月13日(水)~19日(火)
2階 ザ・メインスクエア
■大阪高島屋:5月27日(水)~6月2日(火)
1階 グッドショックプレイス 今回ご紹介したプロジェクトの様子は動画でもご覧いただけます。

