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おしゃれな人がいて、いい香りがして、美味しいものがあって、不思議なものもあって、デパートにはいつも発見があふれています。WEBマガジン「デパートロジー」では、
日本橋高島屋を中心にぐるりと歩いて見つけた面白いモノやコトをお知らせ。
息抜きついでに、ちょっとのぞいてみませんか。

ローズちゃん

更新日:2024/4/2

vol.14「飜古為新(ほんこいしん)」の精神で

CONTENTS.1 染織の技と伝統を次世代へつなぐ

染織五芸の最高峰を志し、売り手である高島屋と作り手の同人が切磋琢磨して継続している上品會(じょうぼんかい)。その会風「飜古為新(古きを飜して新しきを為す)」を体現するように、同人のみなさんは、何百年と続く匠の技と伝統を未来へつなぐため革新的な表現に挑戦しています。その中でも今回は〈龍村美術織物〉と〈千總〉の方々に、これからの時代への想いをうかがいました。

▲左から、〈龍村美術織物〉代表取締役社長 龍村育さん、高島屋 呉服部日本橋店 外販担当係長 尾崎さん。後ろは、小堀遠州愛用の名物裂を復元させた「遠州七宝」文様の帯

1894年に京都で創業した〈龍村美術織物〉。初代龍村平藏氏は新技術に取り組みつつ古代織物の復元も手がけ、織物を芸術の域へ高めました。世界的ブランドのドレス生地の制作や、全国の劇場の緞帳、航空機のシートカバー、祭礼の懸装品まで、幅広い領域にその技が活かされています。今秋に五代龍村平藏を襲名予定の現社長・龍村育さんに、高島屋呉服部の尾崎さんがお話を伺いました。

尾崎さん 〈龍村美術織物〉さんの創業の経緯について教えていただけますか。

龍村さん はい。初代は大阪の両替商の家に生まれ、芸術に造詣が深く俳句で身を立てようと考えていたそうです。しかし家業の事情で叔父が経営していた呉服商で働き始め、徐々に織物に没頭し、織物の本場である西陣で独立しました。また、その叔父の呉服商をのちに買い取ってくださったのが高島屋さんです。

尾崎さん それが高島屋の大阪進出となりました。

龍村さん 高島屋さんは当時すでに京都で名高く、初代は織物の技術研究を重ねる中で完成した織物を飯田社長にご覧に入れていたそうです。飯田社長が東京藝術大学や東京国立博物館にご紹介くださったことで、初代は古代裂の復元を手がけるようになりました。

尾崎さん そのような長く深いご縁があればこそ、高島屋オリジナルブランド〈龍村錦帯〉が生まれたのですね。

龍村さん はい。戦争や景気の浮き沈みなど時代の荒波を超えて続いてきたブランドですので、時代に応じて新たな色柄や機能を加えたものも多いです(下写真)。

尾崎さん 我々が日々うかがうお客さまからのご要望を集約してお伝えし、龍村さんが技術を注ぎ込んでそれに応える商品を実現してくださる。理想的なコラボレーションだと思います。

▲武将の鎧に着想を得た「威毛錦(おどしげにしき)」は1938年ベルリン国際手工業博覧会で金賞受賞の傑作。近年の好みに合わせた新色(手前)は、従来色(奥)より落ち着いた色味で、地色もグレイッシュな墨色に

▲「軽くて締めやすい帯が欲しい」とのニーズに応えた「宝鏡華文錦」の袋帯(右)。左の「宝鏡唐華文」の柄はそのままに、糸を細くすることで厚みを減らし軽量化に成功。文様の品格は保ちつつ、薄くなったことで締めやすく機能的に。

尾崎さん 龍村さんは雑貨も多彩ですね。

龍村さん はい。大正時代から古代裂の文様をアレンジした雑貨を販売していました。現在では、これらの雑貨が若い方々のきものの世界への入口となり、また現代のファッションとのコーディネートの一助になればと、弊社サイトで「LIFE STYLE COLLECTION」としてもご紹介しています。

▲(右)法隆寺伝来の文様をもとにした本袋帯「円文白虎錦(えんもんびゃっこにしき)」1,210,000円
(左)ビーズバッグは帯の文様をモチーフにしてガラスビーズを一つずつ手作業で織り上げています。330,000円

 

▲〈龍村美術織物〉の「ライフスタイルコレクション」サイト

▲ビーズバッグは帯の文様をモチーフにしてガラスビーズを一つずつ手作業で織り上げています。330,000円

 

▲法隆寺伝来の文様をもとにした本袋帯「円文白虎錦(えんもんびゃっこにしき)」1,210,000円

 

▲〈龍村美術織物〉の「ライフスタイルコレクション」サイト

尾崎さん 企業とのコラボにも積極的ですね。

龍村さん はい。新しい顧客を開拓するため、キャラクターやアニメーションとコラボした商品も販売しています。

尾崎さん 海外の有名ブランドの生地を制作されたりも。

龍村さん そうですね。洋服生地だけではなく、ブティック内のインテリアファブリック(壁紙クロス・ソファ・クッションなど)として採用していただくケースも多いです。

尾崎さん 当店でも、海外へのおみやげにとテーブルセンターを購入される方が多いです。クリスマスやハロウィーンには新柄も出されていますね。

龍村さん はい。現代の日本人がなじみ深い西洋の行事に合う柄もつくろうと数年前から発売しています。

▲クリスマス(左)とハロウィーンの新柄。世界中の関連出典を調べ、〈龍村美術織物〉にふさわしいストーリーのあるモチーフを選定しデザイン化

尾崎さん デザインはどんな方がご担当を?

龍村さん クリスマスやハロウィーン柄は20〜30代の制作部員に任せています。

尾崎さん 若手の方も多いのですね。

龍村さん 業界の高齢化は今後の課題ですが、京都には美術大学が多いので、日本画や染織を学び自分の可能性を試してみたいと入ってきてくれる若者も増えています。

尾崎さん それは嬉しいですね。今後はどのような展開をお考えですか?

龍村さん 弊社の美術織物の技術は世界一という自負があります。織物業の存続のためにも、今後はファインアートの分野にも力を入れたい。さまざまなアーティストとコラボした作品も発表予定ですし、今後はアートの分野でも高島屋さんとの協業を広げられれば嬉しいです。

▲〈千總〉で商品開発を行うプロデューサーであり製作部部長の森輝昭さん(左)と尾崎さん

1555年に創業した京友禅の老舗として日本のきもの文化を牽引する〈千總〉。京友禅で培われた技術やデザインをもとに、スカーフやバッグなど和装の領域を広げる多彩なアイテムを開発し、海外の有名ブランドとのコラボレーションにも積極的です。今回はそんな〈千總〉の挑戦について、製作部部長の森輝昭さんに伺いました。

ー 受け継いできた日本の美意識を
新商品の開発にも活かして

尾崎さん 〈千總〉さんの創業は室町時代だそうですね。

森さん 来年で創業470年を迎えます。明治時代には、日本画家に友禅の下絵を依頼する新しい試みや、ビロード友禅などの技術開発も積極的に行い、高島屋さんとともに美術染織品を海外へ発信するパイオニアともなりました。現在もさまざまな和のデザインのアイテムを開発しています。

尾崎さん 高島屋ではオリジナル振袖ブランド「誰が袖好み」や、七五三のお祝い着を制作していただいていますね。きもの以外ではスカーフも好評です。

森さん スカーフは10数年前に開発しました。一枚の布を美しく表現するという意味ではスカーフはきものと親和性が高いのです。

▲シルクシフォン素材の「生命の彩り」(黒)46,200円。図案はスカーフ用に新たに描き起こすそう。大判なので和装とも相性がよく、さっと羽織るだけで印象が変わります

尾崎さん 最近ではバッグも発売されたそうですね。

森さん はい、「オクタゴン」というコレクションです。2020年、初の旗艦店である「千總本店」の開業にあたり、きもの文化をより広く発信するため和装にも洋装にも合うものを開発しました。また〈千總〉が大切にする"自然への敬愛"を背景に、ジュエリーも発売しています。

▲「オクタゴン」コレクションのバッグは「千總本店」と「千總オンラインショップ」のみで販売。フラットに畳める仕様はきものを畳む美しい所作からの発想。持ち手には竹細工をイメージした意匠も

ー 老若男女が直観的に美しいと感じる
普遍的なクリエイティブを

尾崎さん 2024年の千總振袖カタログの表紙にもなった「花香る」も現代的ですね。

森さん 冬を乗り越えて咲く梅の香りを、花が浮かび上がるデザインで表現しました。30代の女性図案家がプロデューサーとともに配色も吟味しながら考案。チャレンジングな柄でしたが大変好評です。

尾崎さん 「若い女性のデザインなんですよ」とお伝えするとお客さまもいい反応をくださいます。

▲振袖「花香る」(左)と、鉛筆や木炭、胡粉で描かれた図案。顔周りは明るくなるよう白を多く配色。金糸・銀糸のきらめきも緻密に計算しながら配置

森さん また2021年からシグネチャーコレクションとして「花と鳥と」を発表しています。〈千總〉のものづくりは常に「自然」を大切な発想源としてきたことを再確認し、自然への敬愛を現代的に表現したデザインで構成しています。

▲「花と鳥と」2023秋冬コレクションより。よりファッション性やアート性を意識したデザインに

染織の伝統と未来を担うブランド〈千總〉として、世界に誇るデザインや技術を感じられる作品にいっそう取り組んでいきたいです。

▲「花と鳥とMEN」のメインビジュアル。従来の男性用きものとは異なる華やかな柄のオートクチュールきものや長襦袢などをラインナップ

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「呉服の高島屋」をいまに継承する「上品會」。

染織五芸(織(おり)・染(そめ)・繍(ししゅう)・絞(しぼり)・絣(かすり))を競い合い、この世界で独自の地位を築いてきた上品會。
始まりは1936(昭和11)年、長堀店開店十五周年記念の催事で、染の千總、織の矢代仁、帯の龍村の協力を得て開かれた「染織上品會」です。戦争で一時休会後、1953(同28)年に「飜古上品會」として再開しました。初代龍村平藏が記した資料には、〝上品とは単に物を意味するだけでなく、古くは親王の階級を、仏教用語では成仏(悟りを開くこと)の階級を、また源氏物語の雨夜の品定にも表現されるなど多様な事象中の最上級〟とあります。
「飜古為新(ほんこいしん―古きを飜(ひるがえ)して新しきを為す―)」を会風とし、古典や伝統をふまえながらも縛られることなく、流行にもとらわれることなく、その時代にふさわしい呉服を創造・発表する場となってきました。いまも名匠・名家と高島屋が作品を通して趣旨を継承し、多くの人々に注目されています。

(左)1953年飜古上品會(復興第1回)会場の初代龍村平藏と高島屋社長飯田慶三。
(右)初代龍村平藏名で飜古上品會ご案内状に添えられた「上品會由来」。(画像提供:高島屋史料館)

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催しのご案内

染織の技と伝統の進行形
上品會同人雑貨コレクション

4月17日(水)→23日(火)
本館1階 正面イベントスペース
長年にわたり、上品會作品を手がけてきた同人各社も、その技と伝統を継承し守り続けながらその一方で未来に向けた「モノづくり」にも取り組んでいます。本展ではきものや帯にとらわれることなく新たなフィールドで進化を続ける上品會同人の雑貨を一堂にお披露目いたします。

CONTENTS.2日々の暮らしに、
「上品會(じょうぼんかい)」の美を

本館7階呉服サロンでは、上品會のきものや帯が放つ美を身近に感じていただける雑貨をラインアップ。上品會の作品の感性が漂う小物アイテムも必見です。

龍村美術織物
格調高く華やかな織物を楽しんで
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千 總
きものの柄行きがモダンなスカーフに
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こちらのお店をご利用いただくと、先着で「おすすめスイーツ」をプレゼント!
詳しくはCONTENTS.4にある「sweets♥eats」をご覧ください。

CONTENTS.3ぶらぶらゆらり日本橋

日本橋のお散歩スポット

いよいよ春本番、外を歩くのが気持ちいい季節です。桜の季節は過ぎても、チューリップやツツジ、ハナミズキに藤など、まだまだ見頃となる花はたくさん。新緑のみずみずしさにも心癒されます。日本橋高島屋でのお買物の前後に、かわいいお花を愛でたり、緑が囲むベンチでほっとひと息入れませんか。そんな心地いい時間を過ごせるスポットをご紹介します。

お買物の合間に庭園での癒やしを

日本橋高島屋S.C.屋上

小川の流れる芝生広場が開放感満点

坂本町公園

まさに都会のオアシス

福徳の森

CONTENTS.4
おすすめのスイーツをご紹介! sweets♥eats

日本各地の菓子が集う「銘菓百選」

北から、南から。日本各地の銘菓を取り揃えた、本館地下1階の「銘菓百選」コーナー。季節限定や入荷日限定の味も店頭に並ぶので、ご来店の際は要チェックです!

浅草 小桜
かりんとう専門店の粋な味わい
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神戸風月堂
春を感じる、
季節限定の「神戸ぶっせ」
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一六本舗
お口に広がる、上品な桜の風味
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読者お買上げプレゼント

4月3日(水)→30日(火)の期間中、「DEPARTOLOGY(デパートロジー)」のWEBページをご提示のうえ、本ページでご紹介した〈龍村美術織物〉〈千總〉にて税込5,000円以上お買上げのお客様、先着100名様に『sweets♥eats』でご紹介したブランドのスイーツ(1種類)と引き換えができるチケットをさしあげます。※お買上げ1回につき1枚プレゼント引換券をさしあげます。※プレゼントは1組様につき1点限りとさせていただきます。※期間を過ぎた場合はご利用いただけません。※引換券1枚につき〈浅草 小桜〉ミニ小箱 二種詰合せ(細口・黒太)432円、〈神戸風月堂〉神戸ぶっせ(さくら風味)(1個)162円×3点、〈一六本舗〉ひと切れ一六タルト「桜」(1個)162円×3点のいずれか1種と交換できます。※準備数は限りがございます。予定数に達した際はご容赦ください。