Feel a SEASON

季節を愉しむ暮らしの提案

季節には、その時々にしか味わうことのできない美しさや魅力があります。
そんな四季の愉しみを、暮らしの中に取り入れてみませんか?
普段の生活をより豊かに彩るヒントを、さまざまな分野の方にお聞きします。
今回は、子どもの頃から和菓子に親しみ、季節を感じてきたという
フードスタイリストの竹中紘子さん。
子育てに仕事に忙しい毎日でも「お茶の時間はやっぱり大切」という竹中さんに、
初夏を彩る和菓子の魅力や、お茶時間の楽しみ方について伺いました。

vol.4

料理家・竹中紘子さんが愛でる、
初夏の和菓子とお茶時間

子どもの頃から和菓子は身近な存在でした。実家のそばには昔ながらの和菓子屋さんがあって、おやつに買ってもらうのが楽しみでしたね。今でも、両親が家に遊びに来てくれるときは和菓子を持ってきてくれますし、私も手土産に選ぶことが多いです。

和菓子のような甘味が家にあるとホッとしますし、何より、四季の訪れを感じることができるんです。

涼を感じる、
お気に入りの和菓子

初夏になると、涼しげなお菓子が出始めます。とくにくずきり、麩まんじゅう、水まんじゅうはこの時期必ずいただく大好きな和菓子です。

くずきりをはじめて食べたのは、まだ小学生の頃。家族旅行で訪れた金沢の料亭で、食事の最後に出されたくずきりの透明な美しさに驚いたことを今でも覚えています。苔むした庭に蝉の声が響く、あのお庭の風景や初夏の空気と一緒に、大切な夏の思い出になっています。ただ、黒蜜の美味しさがわかったのは大人になってから。そして、このコクのある甘みはコーヒーと相性がいいということも知りました。

麩まんじゅうは売っている期間が短く、夏の初めにしか食べられない和菓子です。普通のおまんじゅうや大福とは違う、モチモチでツルッとした食感や青々とした笹の香りに、「この季節がやってきたな」と感じます。温かい緑茶と一緒にいただきながら、新緑の季節がふわっと思い浮かんでくる、まさに初夏の和菓子ですね。

本格的に夏が始まると水まんじゅうの出番です。透明でみずみずしい見た目と、ぷるっとした食感、こしあんのなめらかな口当たりがとても好きなんです。水まんじゅうには冷やしたほうじ茶なんかが合うかなと思います。冷たい飲みものには、形のしっかりしたロックアイスを贅沢に使うと見た目もいっそう涼やかになりますよ。

和菓子に合わせた器選びと
盛り付けのコツ

和菓子を盛り付けるときは、少し大きめの器を選び、思い切って余白をつくることがポイントです。包みから出してすぐ食べられるものだけど、せっかくだったら愛でながら大切に食べたい。余白があることで造形がしっかり映えますし、見た目も涼しげになります。

くずきりや水まんじゅうは、その美しい透明感がいっそう引き立つようにガラスの器を合わせたいですね。さらに麩まんじゅうを包む葉は、水でほんの少し濡らしてあげて。夏の始まり、新緑が雨に濡れ香り立つようなイメージを、この一手間で演出することができますよ。

お菓子やお料理からだけでなく、生活の端々にいつも季節を感じたいと思っています。なので、家の中にはいつも植物を飾っているんです。春から夏にかけてはハナミズキやドウダンツツジなどがきれいですよ。こうした枝ものの植物はもちが良く、花や葉が散るところまで時間をかけて楽しむことができるのでおすすめです。

季節を感じながらお茶をする時間はとても幸せなものです。1歳になる娘とも一緒に和菓子を囲みお茶を楽しめる日が来るのを、今から楽しみにしています。

竹中紘子

Hiroko Takenaka

料理家、フードスタイリスト。素材の持ち味を生かした家庭料理やおつまみ、シーンに合ったスタイリングが得意。雑誌、広告、食に関わる事業のブランディングなど幅広く活動中。スタイリング・料理再現を担当した本に「高峰秀子のレシピ―「台所のオーケストラ」より」(ハースト婦人画報社)、スタイリング・レシピ監修「おうちおつまみ」(エイ出版社)がある。