JOURNALジャーナル

TAKASHIMAYA BEAUTY JOURNAL

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TAKASHIMAYA BEAUTY JOURNAL

The essentials of beauty 010.
あの女(ひと)の美しさの本質

HIKARUさん
ヨガ講師、アーユルヴェーダカウンセラー

2019.6.25

心地よい静寂が支配する清々としたフロアに、よく通る、落ち着いたトーンの美しい声が響き渡る。火曜日の朝。代々木駅に程近い「アンダーザライト ヨガスクール」のメインフロアで毎週開催される、「シヴァナンダヨガ」と呼ばれる古典ヨガのクラスには、初心者からベテランまで、幅広い受講者が集まる。それぞれが、「今=ここ」にある自分の心身に向き合いながら、静かに響く声に耳をすまし導かれ、深い呼吸と動作を繰り返す。このクラスの中心にいるHIKARUさんは、その声のイメージ通り、凛とした美しさの中にも、秘めた強さや奥行きを感じさせる女性だ。

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HIKARUさんのヨガとの出逢いは、日本や海外のコレクションに出演するモデルとして華やかに活動していた時期と重なる。モデルのキャリアを重ねながらも、自分自身の考えよりも服や商品を基準にして進む仕事に、満たされない思いを抱き始めていた。時を同じくして、HIKARUさんが趣味で所有していたカスタムメイドのマウンテンバイクが盗難されるという憂き目にあう。「大切にしていたものが一瞬にして自分のものではなくなってしまった。そんな経験を経て、道具を必要としない、自分一人で楽しめるもの、そして自分の成長につながることに取り組みたい、と。そう考えたときに惹かれていったのがヨガでした」。

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2000年、自宅に近い公民館でヨガを教えていたインド人の先生との出逢いで始めたヨガ。ヨガについて学び、トレーニングを重ねるうちに、いつしか周囲の人に頼まれて教えるようになった。モデルの仕事をしながら、公民館を借りてヨガを教えるという生活を数年間重ねた後、2010年まで所属していたモデル事務所をやめてヨガの活動に専念することに。「時には、あまり賛同できない商品を宣伝する媒体となる仕事を続けることより、ヨガのクラスを毎週休むことなくつとめたり、日々の暮らしに役立つ学びをシェアすることに興味が増していきました」。心を穏やかにして、自分自身を解放していくためのヨガ。その学びを深めていくうちに出逢ったのが、現在ではHIKARUさんの両輪のひとつであるアーユルヴェーダだ。

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「ヨガが心のケアをする学問だとすると、アーユルヴェーダは体の学問です。伝承医学であると同時に、インドでは現在でも第一医療。食事、睡眠に始まり、身体の変化や体質に合ったケアのルーツを知りたいと考えたときにアーユルヴェーダを知り、学びたいという気持ちが強まりました」。病気の人だけではなく、健康な人を守るのもアーユルヴェーダの目的のひとつという。「充実した日常を送るために生活習慣を見直し、体質にあった食事の取り方を意識することが大切です」。アーユルヴェーダの資格を取得したHIKARUさんは、アーユルヴェーダの講座を教えると同時に、ヨガとアーユルヴェーダを統合させた個人カウンセリングも行っている。

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「アーユルヴェーダでは、リズムのある生活を送ることが健康につながります」と語るHIKARUさんに、日常のルーティンを紹介してもらった。起床は6時半前後。だいたい11時頃、遅くても日付が変わらないうちには就寝する。「反省会は次の日の朝にまわし、一日の終わりには、今日できたこと、がんばったこと、良かったこと、楽しかったことなどを存分に思い出します。たとえ特別なことがなかったとしても、大事が起こらなかった平穏な一日に感謝し、このようなことに一旦思いを巡らしたら、全てを手放して手ぶらの状態で眠りにつくようにしています。ぐっすり眠った翌朝の目覚めは良くなり爽快ですよ」。起床の後はコップ一杯の水を飲み、トイレに行き、シャワーを浴び、朝食をとるという流れだ。

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一日のスタートには、「昨日はこれが出来なかったので、今日こそはやってみよう、この先慌てたくないから、今から少しずつ準備を始めておこう、などの目標を立てます」。HIKARUさん自身は、早朝から仕事がない日は朝食前に1時間程度、ヨガのポーズや呼吸法、瞑想などの練習の時間を持つことを日課にしている。朝、時間が取れないときは昼食前や夕食前に練習の時間を持つ。HIKARUさんが充実したエネルギーをチャージするために必要な、欠かせないルーティンだ。

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モデルの仕事からヨガ、アーユルヴェーダの道へ歩み、年齢を重ねるうちに、自分の中にも変化を感じることがある。「以前はより高く、完璧を目指そうとしていましたが、現在は『7、8割できればOK』がすべての基準になっています。ときには失敗もあるし、抜けてしまうこともある。それでもよいのだと」。また、「実は、数千年続くヨガの伝統では、ヨガの練習対象者は男性でした。女性には一生をかけて特有の時期があり、思春期から始まる月経、人によっては出産や子育て。その後、閉経を迎える前後には更年期、といったダイナミックな変化がついてまわります。女性は、そのダイナミックな変化と共に日常生活の中で充分苦行しているので、練習の対象外だったのかもしれませんね」。現代社会で多様な活動を広げている女性に向けて、心や体との向き合い方、セルフケアの方法を伝えたいという思いもある。

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HIKARUさんを捉えて離さないヨガやアーユルヴェーダの魅力には、これまで出逢ったインド人の指導者達の魅力に拠ることも大きい。「頭の回転が早く、雄弁で、時にはシニカル。知的なユーモアを交えた話には起承転結がしっかりある。特に古典書での表現は直球のため、驚くことも多いですがどこか惹かれます」。

ルーティンと同じくらい大切なことは、ときに奇想天外とも思える新しい世界を見聞して、刺激を受けること。現在のHIKARUさんにとっては、一年に1度は出かける海外への旅がその機会となる。「インドにも行きましたが、最近はヨーロッパに行くことが増えました。これからも、新しいこと、自分とは違うこと、難しそうなことにも挑戦することを厭わない、オープンな心の状態を保ちたいですね」。



HIKARU ヒカル
アンダーザライト ヨガスクール シニアティーチャー。全米ヨガアライアンスE-RYT500、YACEP認定講師。シヴァナンダヨガ正式指導者、アーユルヴェーダ・ヒーリングコンサルタント(日本アーユルヴェーダスクール認定)、Ayurvedic Medicine Practitioner(米国補完医療大学発行)など各資格を取得。1970年生まれ。ファッションモデルとして活躍中にヨガに出合う。現在は、ヨガの指導に加え、AyuSya(アーユシュヤ)にて、ヨガとアーユルヴェーダの叡智を統合させたセルフケアの方法を提供する。指導者養成コースのリードトレーナー、全国各地でワークショップやリトリートなど多岐に活動を展開。著書に「やさしいヨガ」「はじめての楽しいヨガ」「はじめてのアーユルヴェーダ」「体が硬い人のヨガ入門」(主婦の友社)等がある。
www.ayusya.jp


撮影協力
UNDER THE LIGHT YOGA SCHOOL
アンダーザライト ヨガスクール
2007年よりでシニアティーチャーとしてレギュラークラスを受け持つHIKARUさんは全レベルの方を対象にしたクラスを週に2回担当している。

毎週火曜 10:40~ シヴァナンダヨガ
毎週水曜 16:30~ 瞑想のためのハタヨガ
http://www.underthelight.jp

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写真=キムアルム Photography by Ahlum Kim
文・藤野淑恵 Text by Toshie Fujino