美人とチョコレートの抜き差しならない関係

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美容ジャーナリスト/エッセイスト。女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『されど“男”は愛おしい』』(講談社)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)など著書多数。

チョコレートショップには美人が多い……誰からともなくそう言い始め、今はそこに確固たる確信を持っている。話題のチョコレートショップを覗くと、もう間違いなくオシャレな女性でいっぱい。パリもウイーンもチョコレートの美味しい都市は、例外なく美人が多い。美人がチョコレートが好きなのか、チョコレートが美人を生むのか。

言うまでもなく、チョコレートにはポリフェノールが含まれていて、その抗酸化だけでも充分に美容効果はあるわけだけれど、そもそもチョコレートの起源は、滋養強壮にあったと言われる。それを甘いものが大好きな貴族たちが、甘くしてお菓子として食することを流行させたのが、チョコレートの始まり。

そして一方、一流ホテルのベッドサイドに、聖書とチョコレートが置かれているのも、夜寝る前は聖書を数ページ、それが心を穏やかにし良い眠りを誘い込む"おまじない"だとすれば、"朝起きたら一欠片のチョコレート"が、良い目覚めと活力を引き出す"おまじない"だからなのである。

美しいチョコレートが
テーブルにあると、
それだけで気持ちが高揚するのは今も昔も変わらないはず

よく知られているように、それまでドリンクしかなかったチョコレートが固形となるきっかけを作ったのは、マリーアントワネットだったと言われる。苦い薬を上手に飲めないからチョコレートで包んだら? という発想から。実はもともとチョコレートには体の不調を直す薬という、もう一つの役割があったからこそ、苦い薬と一緒に飲みましょうと言う判断になったのかもしれない。

そもそもパリにチョコレートを持ち込んだのもマリーアントワネットで、母国オーストリアから、お菓子職人やパン職人を伴ってフランスへ輿入れしたと言う話も多くあるが、そこにはチョコレート職人もいたと言う説がある。

それがベルサイユ宮殿の貴族たちの間に、瞬く間に広がっていったのは言うまでもない。ひょっとすると、ひどく孤独だったマリーアントワネットが、チョコレートで少しずつ気位の高い貴婦人たちの心を溶かしていたと考えられなくもない。美しいチョコレートがテーブルにあると、それだけで気持ちが高揚するのは今も昔も変わらないはずで、社交が仕事だった貴婦人たちにとって、見るからにキュートなチョコレート菓子は、オシャレと同様、毎日のおしゃべりのエッセンスとなっていたに違いないのだ。

ちなみに、貴婦人たちの憧れの的で、きっとそうしたお茶の時間にいつも噂の的だったはずの「オスカル」も、こっそりと自室でチョコレートをほおばったのだろうか。

いずれにせよ美人のそばにはいつもチョコレートがあった。今、バレンタインデーに女性からチョコレートが贈られるのも、そうした抜き差しならないルーツからも、"チョコレートが女を美人に見せる"と言う特別な力を宿したせいなのかもしれない。少なくとも、私たち女を幸せにしてくれるチョコレートの魔法を、あなたにもかけてあげると言う意味合いが含まれているに違いないのだ。

チョコレートは、その存在そのもので
女を輝かせる多才な魔法を持つ

さて今、パリが"ショコラの街"になっているのは、フランス革命で職を失うことになるチョコレート職人たちが、次々宮殿そばにお店を構えたからだとも言われる。そうした過去を紐解くと、チョコレートの歴史の中に、胸が締め付けられるような淑女たちの喜びと悲しみが見え隠れし、ただの砂糖菓子にはない、ほろ苦さもまたチョコレートの醍醐味であることが浮き彫りにされてくる。

ともかくチョコレートが甘さ美味しさだけでなく、その存在そのもので女を輝かせる多才な魔法を持つのは確か。でなければチョコレートショップにいる女性たちが、あんな風に目を輝かせているはずは無いのだ。と同時に、ほろ苦さや味の深みや神秘性、そういうものが少女だけでない、大人の女を惹きつける大きな引力になっているのだろう。

人を虜にして離さないものには、すべからく不思議な力が宿っている。チョコレートが、ここまで強く人を惹きつけるのは、ただのお菓子ではない、人の手間と情熱とセンス、全てを凝縮させさせているからなのだ。そしてベルサイユ宮殿で繰り広げられた、チョコレートのドラマもまた、その不思議な力の1部になっている気がしてならない。