高島屋美術顧問・中澤一雄のアートあれこれ話

高島屋美術部の顧問<中澤一雄>が語る。 アートにまつわるちょっとためになるメッセージをご紹介します。

中澤一雄プロフィール

あれこれ話

第18回<1年の計は。――初商>

「仕事納めと、仕事始めは?」とのお尋ねに、「納めは12月31日。仕事始めは元旦。」と、答えを返された木彫家がおられます。創作を休む事はないという意味でしょうか。百貨店も、大晦日までお客様の新年を迎えるお手伝いをして、年明け2日から「初商」。この数十年の間に、初商いは4日から、3日になり、更に2日と早まってきて、ついに元旦から営業をされている所もあります。季節感の先取りは戦略の一つ。利益の創造にも、留まる所を知らないという事でしょうか。しかし近年は、百貨店の中にも、初商の日を、元にもどそうという動きもあります。
さて早まる「初商」でも、その日は出社し、お客様と出会い、どの様な美術作品が販売できるかと、その年の仕事の方向を考える1日としてきました。平成4年1月3日は、個展開催中で市場評価の高い日本画家の故坪内滄明(そうめい)先生の「秋錦」をお求めいただき「初商」の中でも、特別な日として記憶に残っています。中村岳稜の内弟子として学ばれ、澄んだ自然の四季の風景を描いた画家です。ご趣味の渓流釣りに同行した方のお話しです。出来上がった作品の場所が何処かは、同行したのですぐに判るのですが、スケッチしたり、写真に残したりしていた様子は全くありませんでした。坪内先生から、絵になる場所は、瞬時に記憶に留められて描くことができるとお聞きした時には、驚嘆されたそうです。グループ展、個展など、多くの作品を扱わせていただきました。
季節の先取りは、商売に重要ですが、心の内は先取りし過ぎず、今の季節の移ろう美しさを、スケッチの出来なくても 心に刻んでおこうと思います。

第17回「百歳の日本画家と八十九歳の俳人」

第16回「金継ぎ」

第15回「工芸家と豆本」

第14回 図録―<カタログ>と<作品集>の間

第13回 創作の足跡―「案内状」

第12回「見せたい」「見たい」と「売りたい」「買いたい」

第11回「手に取れるように描ける」―油画

第10回「日本画の絵具って?」

第9回「漆が乾く」

第8回「水彩画とビアホール」

第7回「彫刻―影も作品」

第6回「木版画と文庫本」

第5回「リトグラフと名刺」

第4回「銅版画とオペラグラス」

第3回「二重箱(にじゅうばこ)ー器のうつわの器」

第2回「器のうつわ」

第1回「一器三様(イッキサンヨウ)」