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田中武氏は、円山応挙をはじめとした日本美術や中国絵画を引用しながらも、時代の空気感や今日的な題材を織り交ぜ独自の視点で再構築することで、現代の世相を風刺した作品を発表し人気を博しています。
前回、2021年に開催した個展「包まれている」では、釈迦の16人の高弟をモデルにして中国や日本で図像化されてきた「十六羅漢図」から着想を得て、悟りとは対極にある煩悩や欲望をテーマに描いてきた「十六恥漢図」シリーズ全16点が完結しました。
今回の展覧会では、「主人公」というテーマで作品を展開します。「十六恥漢図」に描いてきた人物像のポーズは仏像や仏教図像からの引用である一方で、「主人公」は誰しもが幼少期に憧れたヒーローやヒロインという存在として、その姿形は私たちの遠い記憶の片隅に今なお鮮明によみがえります。田中氏は、それらに共通する要素としてポーズに着目し、作品の表現に合わせて約1年の研究を費やした素材と技法等で少年・少女像に取り組んでいます。 かつて世界の中心を自分自身の視点でしか見られなかった頃、今も私たちの胸の内にある主人公たちの勇姿を、ぜひご覧くださいますようご案内申しあげます。