京都ときもの

京都は「きもの」の似合う街であります。千数百年もの昔から建ちならぶ町なみ、京都をつつむ風土とうるわしさ、
遠く四方を山々にかこまれ、その山並みから川が帯のように市中に流れ、自然の懐の中で、人々は四季の微妙なささやきやおとずれを、
五感を通して味わってきました。そして、京都には古からの営みを通じて最先端と最高級を追求した「京友禅」や「西陣織」などの、
実に多様な染織技法が発展してきました。

京友禅

手描き友禅

友禅染は、糊を用いる防染法で模様を描き出す工程は20種以上にのぼり、その分野ごとに専門化した分業で作り上げられます。手描き友禅は長い時間と丹精をこめて、職人だけが持つ技と心が創りあげた、日本の美の結晶です。
1.図案の作製
古今東西の美術品、民芸品、書籍などを参考として
構想を練り、図案を作製します。
2.青花付け
青花という露草の花からとった青い液で、
仮縫いした白生地の上に下絵を描いていきます。
3.糊置き
仮縫いをほどき、伸子張りをした生地の下絵に
従って、筒紙に入れた糊を指先で調節しながら
輪郭にそって置いていきます。
4.挿し友禅
地入れの乾燥後、彩色の作業にとりかかります。
ぼかし、重ねいろなどの効果も、この段階で
行われます。
5.地染め
地色のあるものは、さらに模様の上に伏せ糊をして
地色を引染めし、もう一度蒸して色をととのえます。
挿し友禅と引染めの行程によって、独特の色合いが
生まれてくるのです。
6.印金
必要な箇所に金箔を張りつけます。
7.刺繍
金銀糸や色糸で刺繍を施します。
友禅に「縫い」「印金」の技術が加わり、
よりいっそう豪華絢爛な雰囲気を作りだすのです。

型染友禅

何枚もの型紙に自然を彫り、本当に美しいと思う形と色を創りだす。筆よりも小刀のほうが自由に線が描けるというまで技を磨いた職人が、型を超え、心にある自然の姿を描きつくしたのが型染友禅です。
1.図案の作製
まず最初に多数の古代裂(きれ)や国内外の美術品、
資料などをもとに図案が構成され、着色した
図案が作製されます。
2.型紙の彫刻
次に柿渋で張り合わせた和紙に、図案にそって輪郭が
カチッとする引き彫りや、やわらかな感じの出る
突き彫りなどの技を自在に使い分けて型を掘りぬいて
いきます。模様の粗密、色数の多少によって、型紙の
数は平均で50、多いときは100枚にもなります。
3.型置き・摺り染め
生地の上に型紙をあてがい、写し糊(糊と染料を
混ぜ合わせたもの)をヘラでのばしたり、染料の液を
ハケで刷りこむと型紙の彫りぬかれた部分だけ生地に
染料が付着します。型紙の数だけこれを繰り返すと
美しい模様ができます。
4.地染め
地色のあるものは、さらに模様の上に伏せ糊をして地色の染料を引きます。

西陣織

綴 (つづれ)

一本一本丹念に創り出される綴れ帯。
綴れ帯は様々な行程を経て
織匠の手へと継がれていきます。
1.図案の作製
経糸(たていと)の下に図案を敷き、模様の部分に
必要な彩糸を織り込んでいきます。図案によっては
手間のかかる割には見栄えの良くないもの、豪華に
見えるもの、それぞれです。図案化も綴織の組織を
よく理解して作製します。
2.緯巻き(ぬきまき)
「早車(はやくるま)」という道具を使い
「綛(かせ)」から少量づつの糸を「管(くだ)」に
捲き取ります。緯巻きもすべて手仕事で進められます。
5.製織
爪先をやすりで削り、のこぎり状にします。
爪を道具として織り上げていく。経糸は、通常では
考えられないほどピンと張ります。その状態でないと、
抜き糸を爪でかき寄せることができません。

錦 (にしき)

2色以上の色糸を用いた織物。経糸に色糸
を用いる経錦(たてにしき)と緯糸に
色糸を用いる緯錦(よこにしき)、綾の
組織に別の色糸で模様を織り出す糸錦や
唐織(からおり)など多くの種類があります。
1.図案の作製
最初に図案を制作します。
2.紋意匠図
実際に織るために必要な細かな数値を割り出した
意匠図を作ります。
3.紋彫
紋様の形、織り方、色を指示する設計図である
紋意匠図を基にして穴を開ける作業をし、
紋紙を作ります。
4.糸染
織りに用いる糸を染める工程。糸の太さや精練の
度合いにより染め上がる色が変わるので微妙な色の
調整が必要な作業です。
5.引箔
錦の帯に欠かせない、金や銀の表現をするための
平箔を、金箔や銀箔と紙で作ります。
6.製織
多くの準備を経て織の工程へ進みます。

西陣御召

御召は糸がいのちである。糸を練る、操る、
括る、染める、撚る…。西陣ではその
ひとつひとつの行程が分業制になっている。
糸は反物となるまでに、いろいろな工場
を通って、多くの人たちと会話を交わす。
1.撚糸・整経
枷の状態だった糸を糸枠に巻き取り、さらにクダに移してから撚糸の機械にかける。
手括りの様子。絣括りをして防染します。
織にかける機の癖を考慮して絣を括るという職人魂。
染めあがるたび、括った糸をほどいていきます。
色数が増えるほど、同じ作業が繰り返されます。
「はしご」にかけられた糸をずらしながら絣紋様を
作っていく作業。染めあがった約5,000本の経糸が
はしごにかかり、矢絣の配列に。ここに強撚糸の
経糸を織りこみ、御召特有のしぼができます。
5.紋意匠
芸術家と数学者。両方の頭脳が必要な紋意匠師。
デザイン画から糸を連想して、どんな組織で織るか、
経糸と緯糸の組み合わせを方眼紙のうえに
塗り分けていく。
6.織り
紋紙に空けられた穴に導かれた糸で模様が
織られていく。御召1反に紋紙23,600枚も
必要なこともある。

絞り染め

辻が花

「辻が花」は、室町時代中頃から江戸時代
初めまでの間に制作された「絵模様絞り染め」の呼び名です。鹿の子絞りとは違い、一つの絞りが葉一枚、花一輪、その形を表し、それぞれの色に染め分けられています。地の色、花や葉の色ごとに絞り、染め、乾燥、糸ときを繰り返します。そして「カチン」という墨で花びらや葉脈を描き、くま取り(ボカシ)を施します。その模様は花や葉だけでなく、水や雪、雲、風景、さらに虫や動物にまで及びます。
元は女性の小袖として着用されていましたが、後に男性たちにも広まり、武田信玄、上杉謙信、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など時代の頂点を極めた武将たちも愛用していました。また茶人、千利休や古田織部といった方々その門人たちも折毎に好んで着用するなど、格の高い柄として確立されました。
1.下絵
生地に下絵を描いていきます。
2.糸入れ
下絵にそって、絞り用の糸を縫っていきます。
3.帽子絞り
糸を締めて絞ります。
4.地色染め
地色を染めます。絞った部分が白地で残ります。
5.帽子ほどき
糸を切って、生地を広げます。
6.輪出し絞り
染まっていない生地部分に今度は輪出し絞りを
かけます。
7.輪出しほどき
輪出し絞りをほどいたところです。
8.カチン仕上げ
さらに筆で生地に色を挿して仕上げをします。

丹後ちりめん

丹後ちりめんは、京都府の丹後地方で生産される縮緬の総称。丹後地方は古くから織物の産地として有名ですが、縮緬は江戸時代の享保年間(1716~36)に峰山町の絹屋佐平治が京都西陣で学んだ織物技術を故郷に持ち帰り、研究を重ねて織り始めたのが最初と伝わっています。京友禅や京小紋などの染下生地に適し、白生地の小幅縮緬としては最も有名です。
1.繭
1粒の繭からは、約1,200m内外の生糸がとれます。
品質の良いちりめんを創るには、この繭からとれる
原糸の良し悪しが重要になります。一反に
約3,000個の繭が必要となります。
2.糸繰り
カセになっている生糸を糸わくに捲きとります。
熟練された技術で慎重に作業を行います。
この工程がしっかり出来ていないと
製品の完成度に影響がでます。
3.製織
まず、たて糸を織機にかけます。そしてよこ糸が
加わり、ジャカード機によりとても美しい模様を
織り出し、紋意匠ちりめんが誕生します。
一般にいう「はたおり」とはこの作業のことを
いいます。
4.節取り・生機検査
織り上がった生地を一反一反、結び・節などを
取りながら検査します。
6.白生地検査
練り上がった白生地ちりめんを、
一反ずつ慎重に、また厳重に検査します。

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